artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
金井和歌子 展「もう何もわからない」

会期:2012/06/09~2012/06/14
ギャラリー島田deux[兵庫県]
おとぎ話にでも登場しそうな可愛いキャラクターたちが繰り広げるシュールな世界を、陶オブジェで表現。金井はオブジェと器を並行して制作しており、オブジェの個展は2年ごとに行なっている。可愛さのなかにどこか残酷さを秘めた造形には独自の美学が感じられ、特に女性からの支持が高そうである。また本展では、巨大な作品タイトルを作品の隣に貼り、言葉と造形の結び付きを強めたり(しかも、PCからのプリントをもとに手書きするという凝りよう)、作品の設計図やスケッチを展示するという新しい試みも見られた。彼女の制作のベースには絶望の感情があるらしいが、私にはその絶望が何かまではわからなかった。しかし、作品が魅力的なのは確かなので、今後も個展を見続けたいと思う。
2012/06/09(土)(小吹隆文)
対話する美術/前衛の関西

会期:2012/06/09~2012/07/29
西宮市大谷記念美術館[兵庫県]
同館の開館40周年を記念した展覧会。過去に企画展などを通じて収集した、戦後関西の現代美術作家17組を紹介している。会場構成は、最初に「カンヴァス上の格闘」と題して、須田剋太、津高和一、元永定正、白髪一雄らを紹介し、次からは、「物質と時間」(山口牧生×藤本由紀夫)、「世界を映す」(森口宏一×植松奎二)、「見えないもの」(石原友明×パラモデル)といった具合に、1室ごとに2作家が対峙するかたちを取っていた。作家や作品の数を増やそうと思えばできるものを、あえて作品数を抑えて贅沢な空間づくりに徹したのが素晴らしい。規模は決して大きくないが、最近美術館で見た展覧会のなかでも記憶に残るもののひとつである。
2012/06/09(土)(小吹隆文)
勝又邦彦「dimensions」

会期:2012/06/04~2012/06/16
表参道画廊[東京都]
勝又邦彦は2000年代以来、風景写真の領域でコンスタントに佳作を発表してきた。2001年にさがみはら写真新人奨励賞、2005年には日本写真協会新人賞を受賞するなど、その作品は高い評価を受けている。ただ、彼の仕事を見続けてきて、どこか壁を突き抜けられないもどかしさを感じ続けていたのも事実だ。アイディアの多彩さ、作品の質の高さは間違いないのだが、その知的で繊細なアプローチに、どこか既視感がつきまとう所があるのだ。
今回の表参道画廊の個展は「東京写真月間2012」の関連企画として、東京国立近代美術館の増田玲が構成した。都市の遠景を横長のパノラマ的な画面におさめた代表作の「skyline」(2001年~)のシリーズをはじめとして、「screen」(2002年~)、「Hotel’s Window」(2003年~)、さらに新作の映像作品「cities on the move」が展示されていた。どれも練り上げられたいい仕事なのだが、やはりもどかしさは拭えない。作品の完成度ではなく、もっと「これを見せたい」という確信を見せてほしいと思う。
4つのシリーズのなかでは、ホテルの客室のインテリアと窓の外の眺めを同時に捉えた「Hotel’s Window」に可能性を感じた。「内/外」というステロタイプな図式からはみ出していくような、イメージとしての強度がある。さらに粘り強く、先に進めてほしい作品だ。
2012/06/08(金)(飯沢耕太郎)
第13回ドクメンタ

会期:2012/06/09~2012/09/16
[ドイツ・カッセル]
ドクメンタ13は、大きな庭園、駅舎、ホテル、博物館、旧病院などを活用し、街なか展開が多いだけではなく、なんと国外のカイロやカブールなども会場になっている。会場が想像以上に分散していたために、雨のなか、2日間で全部を見ることはできなかった。しかし、小さな地方都市であるカッセルに、さまざまな場や空間が存在し、また古い建築も残っていることがよくわかった。やはり、歴史を残すことは大事である。新しい使い方を発見できるからだ。例えば、博物館に親和性の高いアートが侵入するケースも、どこからどこまでが常設の展示なのか、一瞬わからなくなる体験をもたらす。公園に点在する作品群に唯一の公式日本人作家の作品がある。大竹伸朗の家はまわりに小舟が散らばり、津波を想起させる。また正式にクレジットされていないが、ポスト災害をテーマにした韓国人の作家チームの展示のなかで、伊東豊雄の南三陸町プロジェクトや津村耕佑のファッションデザインも参加していた。
オープニングのレセプションは、鼓笛隊の演奏によって始まり、来客を庁舎に導入。案内状は出していたが、実質ノーチェックで誰でも入ることができ、夜遅くまで演奏を聴きながら飲み食いできることに驚かされた。小さな地方都市における有名な国際展が、地元の祭りとしても根づいているのだろう。
写真:上=オープニングの風景、中=駅舎会場、下=庭園に設置された大竹伸郎の作品
2012/06/07(木)(五十嵐太郎)
ARTRAIN Koganecho Artist Selection Exhibition

会期:2012/06/04~2012/06/10
吉田町画廊[神奈川県]
関内駅近くの吉田町にはなぜか画廊が何軒か並んでいる。びんびんの現代美術やバリバリのコマーシャルギャラリーはないけれど、これだけ発表の場所があるということは、それなりに需要もあるということだ。一方、そこから南西に1キロほど離れた黄金町界隈には、作品の供給源たるアーティストたちが群居する。これまであまり縁のなかった両者をつなげたのがこの企画。アートレインったってアートの雨じゃなくて、アートをつなぐ列車(トレイン)のほうね。黄金町方面からテンペラ画のメリノ、日本画の阿部道子が出品。ヒエロニムス・ボッスのような幻想世界を緻密に描くメリノと、身近な情景を克明に描写する阿部の対照的な展示だった。
2012/06/07(木)(村田真)


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