artscapeレビュー
勝又邦彦「dimensions」
2012年07月15日号
会期:2012/06/04~2012/06/16
表参道画廊[東京都]
勝又邦彦は2000年代以来、風景写真の領域でコンスタントに佳作を発表してきた。2001年にさがみはら写真新人奨励賞、2005年には日本写真協会新人賞を受賞するなど、その作品は高い評価を受けている。ただ、彼の仕事を見続けてきて、どこか壁を突き抜けられないもどかしさを感じ続けていたのも事実だ。アイディアの多彩さ、作品の質の高さは間違いないのだが、その知的で繊細なアプローチに、どこか既視感がつきまとう所があるのだ。
今回の表参道画廊の個展は「東京写真月間2012」の関連企画として、東京国立近代美術館の増田玲が構成した。都市の遠景を横長のパノラマ的な画面におさめた代表作の「skyline」(2001年~)のシリーズをはじめとして、「screen」(2002年~)、「Hotel’s Window」(2003年~)、さらに新作の映像作品「cities on the move」が展示されていた。どれも練り上げられたいい仕事なのだが、やはりもどかしさは拭えない。作品の完成度ではなく、もっと「これを見せたい」という確信を見せてほしいと思う。
4つのシリーズのなかでは、ホテルの客室のインテリアと窓の外の眺めを同時に捉えた「Hotel’s Window」に可能性を感じた。「内/外」というステロタイプな図式からはみ出していくような、イメージとしての強度がある。さらに粘り強く、先に進めてほしい作品だ。
2012/06/08(金)(飯沢耕太郎)