artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
中原佑介さんを偲ぶ会
会期:2011/08/20
ヒルサイドプラザ[東京都]
この会は当初、8月に80歳を迎える中原さんの傘寿のお祝いをかねて、『中原佑介美術批評選集』の出版記念会として計画されていたものだが、3月に中原さんが亡くなられたため、出版記念をかねた「偲ぶ会」となってしまった。選集の発行は現代企画室とBankART出版。BankARTとは、2005年にスクールの講師として中原さんをお招きして以来の縁だ。横浜市在住だったし。会の参加者は、ざっと見たところ9割方が50歳以上で、数十年ぶりというなつかしい顔もチラホラ。みんな中原さんと親交のあった人たちだが、同時にこれが批評に親しんだ、いや批評に導かれた最後の世代かもしれない。美術に限ったことではないが、批評が衰退して活字離れが顕著になったのは、軽佻浮薄の時代といわれた80年代前後のこと。そんな時代気分を促進した原因のひとつに『ぴあ』があったとすれば、元編集者として少し複雑な気分にもなる。そしてその『ぴあ』もこの夏に最終号を迎えたことを考えると、時代はもうふた周りほど進んでしまったことになるのか。
2011/08/20(土)(村田真)
「石田真也──ワンダフルトラッシュ」展

会期:2011/08/19~2011/08/29
INAXギャラリー東京[東京都]
京都在住の石田真也は、学生時代はテキスタイルを学んでいたが、近年はプラスチック容器や空き箱、壊れたおもちゃなど、道ばたで拾ってきたゴミや日常生活の廃品を素材にして作品制作を行なっている。東京での初めての個展となった今回は、「祭(さい)鏡(きょう)」というシリーズの新作を発表。空間の中央に極彩色の“大祭壇”と、その両脇の壁面に店舗の開店祝いなどで表に飾られる“花輪”のような、派手な装飾物が展示された会場は、アジアのどこかの国のお祭りのような賑やかさで見るからに楽しい。作品にはペットボトルのフタや物干しハンガーなど見慣れたものをはじめ、扇風機の部品や、七夕祭りの際に人々が願いごとを書いた色とりどりの短冊なども使われていて、鑑賞する人たちが作家に質問をしたり、感想を伝えている光景も目にした。インド旅行で目にした色彩や、そこでの祭祀の様子、祭壇のありさま、さまざまなモノが混沌と存在するその生活文化に影響を受けて以来、このような作品に取り組んでいる石田。“ゴミのアート”は他でもときどき見かけるし珍しくもないのだが作品は魅力的だ。私が彼の作品に惹き付けられるのは、その構造をまとめるシンメトリーやリズム、バランスといった要素の調和が、理屈で知的に世界を構築するイメージなのではなく、歩く、触れる、食べるといった基本的生命活動の身体的感覚から発露しているものに感じられるせいかもしれない。今後の活動が楽しみな作家である。
2011/08/20(土)(酒井千穂)
プレビュー:六甲ミーツ・アート 芸術散歩2011

会期:2011/09/17~2011/11/23
六甲山・山上一帯[兵庫県]
明治時代に居留外国人により開発され、その後現在まで関西の身近なリゾート地として愛されている六甲山。その山上一帯に点在する六甲ガーデンテラス、六甲高山植物園など複数の施設にアート作品を展示し、ピクニック感覚で六甲山の自然とアート作品を味わえるのが、この「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2011」だ。澄んだ空気と豊かな緑の中を歩きながら作品を体験すれば、街中のギャラリーで凝り固まった感性が気持ちよくほどけていきそう。ワークショップなど関連イベントも多数開催されるので、秋の一日を山頂でたっぷりと過ごしたい。
2011/08/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:生誕120周年記念 岸田劉生 展

会期:2011/09/17~2011/11/23
大阪市立美術館[大阪府]
「麗子像」などで知られる岸田劉生の生誕120周年を記念した大回顧展。38年という短い生涯のなかで、後期印象派のセザンヌや北方ルネサンスのデューラーから影響を受けた独自の具象表現を模索し、晩年には宋元画や日本の南画、肉筆浮世絵の研究から「でろり」という美意識を生み出した彼の画業を、代表作を中心に、肖像画、風景画、静物画などで振り返る。
2011/08/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:place and picture─広島、絵画、ギャラリー巡り─

会期:2011/09/06~2011/09/11
広島、大阪、京都、神奈川に在住する8人の画家たちが、広島市内と宮島で同時多発的に個展を開催。複数の会場をひとつのプロジェクトで繋ぐことにより、新たな人の流れやアートへの関心が高まることを画策する。地元以外の人にとっては、普段なかなか情報が伝わってこない広島のアート事情を知る絶好のチャンスでもある。宮島以外の会場は半日あれば回れるエリアに集中しているので、これを機に広島に出かけてみては。
2011/08/20(土)(小吹隆文)


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