artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
黒崎香織「SOMETHING TO SEE」

会期:2011/09/01~2011/09/28
INAXギャラリー2[東京都]
へらへらの半紙を縦横2メートル前後につないだ大きな画面に、クレパスでガシガシ描いている。まずその脆弱な物質感とは裏腹のずっしりしたマチエールが特異だ。描かれているのは、食卓の風景をおおい尽くさんばかりの蛾の図であったり、教室内の風景の真ん中に窓の外の風景を鎮座させていたり。モチーフもかなり特異だ。なぜ蛾なのかといえば「とても怖かった」から。「あまりに怖すぎるので克服しようと」思って描くようになったんだそうだ。「好きだから描きました」みたいなどうでもいい絵がはびこる昨今、黒崎の絵のもつインパクトは貴重だ。
2011/09/02(金)(村田真)
浅葉雅子「MAN MADE」

会期:2011/08/29~2011/09/03
コバヤシ画廊[東京都]
菱田春草の日本画をベースに、背景の色や葉のパターンをモダンなデザインに変えた作品。マンガチックなリスや小鳥を配したり、木の輪郭線に糸を使うなど遊び心も見られる。作者には日本画への強いこだわりが感じられるが、それが日本画(または春草)に対する共感なのか反発なのかが見きわめられない。おそらく愛憎なかばするのだろう。そこが曖昧だ。
2011/09/02(金)(村田真)
國盛麻衣佳「be with underground」

会期:2011/08/29~2011/09/03
GGJ[東京都]
國盛は石炭を画材にして絵を描いたり(コール・ペイント)、オリジナルの石炭チョークを用いて「山本作兵衛なりきりワークショップ」を開いたり、とにかく炭鉱をテーマに作品づくりをしている珍しいコ。そのカワイイ容姿と重厚長大なモチーフとのギャップが感動的だが、出身が炭鉱の街として知られる福岡県大牟田市と聞けばなるほど。今回は石炭から灰色、濃灰色、茶色、黒の4色をつくり、にかわで溶いて、炭鉱の廃屋からはずした天井板やセラミックの上に人物を描いている。モデルは炭鉱地ゆかりのおじいちゃんやおばあちゃん。素材も色彩もモチーフもけっして新しくも美しくもないが、こんなことやってるヤツはほかにいないという点で高く評価したい。炭鉱への愛がヒシヒシと伝わってくる。ギャラリーには廃屋の一部が再現され、畳の上でワークショップやトークも行なったという。
2011/09/02(金)(村田真)
辰野登恵子 展「抽象──明日への問いかけ」

会期:2011/08/23~2011/10/16
資生堂ギャラリー[東京都]
出品作品は20点もあるけれど、油彩は4点だけで、あとは版画(リトグラフ)。そういえば辰野が70年代にデビューしたときは、ストライプやグリッドによるミニマルなシルクスクリーン作品だったっけ。なんで版画なのかよくわからなかったけど、80年ごろから抽象表現主義的なタブローに移行してからは、「これが絵画なんだ」と妙に納得したもんだ。だからなんでまた版画に力を入れるのか理解に苦しむ。だいたい彼女の抽象的なイメージをモノクロ版画で刷ったところで、タブローを何十倍も薄めたくらいにしか感じられないし。まあタブローの引き立て役というのならわかるけど、まさかね。
2011/09/02(金)(村田真)
山本基 しろきもりへ─現世の杜・常世の杜─

会期:2011/07/30~2012/03/11
箱根彫刻の森美術館[神奈川県]
彫刻の森美術館の山本基「しろきもりへ」展を訪れる。彫刻家の井上武吉が設計した建築の各部屋において、枯山水風のランドスケープ、螺旋塔、床をおおう数ミリの高さの樹木的な文様(もっとも低い彫刻)と、異なる塩の粗さによる作品群が展開していた。偶然らしいが、来年の3.11までが会期であり、最終日に集めた塩を海に返すという。久しぶりに彫刻の森美術館を散策すると、1960年代生まれの建築家がいろいろなプロジェクトに参加している。一昨年に完成した手塚建築研究所による《ネットの森》、デッキや橋などによる動線計画のほか、クライン・ダイサム・アーキテクツによる目玉焼きのオブジェ(ベンチ)、みかんぐみのタルディッツによる企画展示の空間構成などである。
2011/09/01(木)(五十嵐太郎)


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