artscapeレビュー
「石田真也──ワンダフルトラッシュ」展
2011年09月15日号
会期:2011/08/19~2011/08/29
INAXギャラリー東京[東京都]
京都在住の石田真也は、学生時代はテキスタイルを学んでいたが、近年はプラスチック容器や空き箱、壊れたおもちゃなど、道ばたで拾ってきたゴミや日常生活の廃品を素材にして作品制作を行なっている。東京での初めての個展となった今回は、「祭(さい)鏡(きょう)」というシリーズの新作を発表。空間の中央に極彩色の“大祭壇”と、その両脇の壁面に店舗の開店祝いなどで表に飾られる“花輪”のような、派手な装飾物が展示された会場は、アジアのどこかの国のお祭りのような賑やかさで見るからに楽しい。作品にはペットボトルのフタや物干しハンガーなど見慣れたものをはじめ、扇風機の部品や、七夕祭りの際に人々が願いごとを書いた色とりどりの短冊なども使われていて、鑑賞する人たちが作家に質問をしたり、感想を伝えている光景も目にした。インド旅行で目にした色彩や、そこでの祭祀の様子、祭壇のありさま、さまざまなモノが混沌と存在するその生活文化に影響を受けて以来、このような作品に取り組んでいる石田。“ゴミのアート”は他でもときどき見かけるし珍しくもないのだが作品は魅力的だ。私が彼の作品に惹き付けられるのは、その構造をまとめるシンメトリーやリズム、バランスといった要素の調和が、理屈で知的に世界を構築するイメージなのではなく、歩く、触れる、食べるといった基本的生命活動の身体的感覚から発露しているものに感じられるせいかもしれない。今後の活動が楽しみな作家である。
2011/08/20(土)(酒井千穂)