artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
フジイフランソワ展
会期:2011/01/10~2011/01/22
Oギャラリーeyes[大阪府]
彼女の作品を見るのは約2年ぶり。久々の再会だったせいかもしれないが、一段と絵がうまくなった気がする。作品も、大作2点に屏風に掛け軸などバラエティ豊かで見応えがあった。柳の葉がすべて蛙に置きかえられるなど、この人ならではの大人風味のユーモア感覚も健在。すっかり楽しませてもらった。
2011/01/10(月)(小吹隆文)
アルブレヒト・デューラー版画・素描展─宗教・肖像・自然─
会期:2010/10/26~2011/01/16
国立西洋美術館[東京都]
オーストラリアのメルボルン国立ヴィクトリア美術館が所蔵する作品を中心に、アルブレヒト・デューラーの版画と素描を見せる展覧会。デューラーが芸術の本質として唱えた「宗教・肖像・自然」という三つのセクションに分けて、あわせて150点あまりが公開された。《メランコリアI》をはじめ、キリストの生涯を描いた連作《受胎告知》を一挙に見ることができたのはもちろん、それ以上に圧巻だったのが《マクシミリアン一世の凱旋》。40数枚もの版画をつなぎあわせたこの作品は高さ3mを超える大作で、鑑賞者を文字どおり見下ろすほどの圧倒的な迫力を醸し出しながらも、細部の描写がひじょうに丁寧で、巨視的にも微視的にも楽しめる芸術作品になっている。照明がそれほど効果的ではなかったのが難点といえば難点だが、それでもデューラーの並々ならぬ制作意欲を物語るには十分な作品だった。
2011/01/09(日)(福住廉)
多和圭三 展 鉄を叩く
会期:2010/11/13~2011/01/09
目黒区美術館[東京都]
鉄の塊を玄翁で打ち続ける多和圭三の個展。足利市立美術館からの巡回展だが、今回のほうが見劣りして見えたのはいったいどういうわけか。広い空間に鉄の立方体を配置するレイアウトが不適切だったからなのか、照明に工夫が足りなかったからなのか。打撃の金属音が一定のリズムにしたがっているように、足利の展示は心地よいテンポで鑑賞することができたにもかかわらず、目黒の展示はてんでバラバラで、不協和音にすら達していなかった。展示場の床面をすべて引き剥がし、剥き出しのコンクリートの上に作品を設置した展示方法も、作品の表面的な暴力性と共振させようとしたのだろうが、作品が背景に埋没してしまい、細部の繊細な造形を見えにくくしてしまっていたように思う。
2011/01/09(日)(福住廉)
鉄を叩く──多和圭三展
会期:2010/11/13~2011/01/09
目黒区美術館[東京都]
もうかれこれ30年、鉄の塊を叩いてる。鉄の塊はときに1トンを超えるというから、素人が叩いたところでビクともしないが、彫刻家が大きな玄能で何百回も何千回も叩けば、表面はゆがみ、輝き出してくる。おもしろいのは、そのへんで止めること。叩きすぎてなんら別のかたちにしたりしない。作業としては鉄をひたすら叩くという単純作業で、その効果は鉄の表面をこんもりと輝かせるだけ。鉄のかたまりは高いし、身体には応えるし、持ち運びは不便だし、作品が次々売れるとは思えないし、ストックするにも大変だし、端から見ればいいことなどひとつもないように思える。それなのに、いやそれだからこそ、よくこんなことを30年も繰り返してきたもんだとつくづく感心する。
2011/01/08(土)(村田真)
西田菜々子 展
会期:2011/01/07~2011/01/16
OギャラリーUP・S[東京都]
こちらはさらに若いペインターで、いっそう興味深い作品をつくっている。モチーフは和風の部屋や庭の片隅のようだが実景ではなく、唐突に掛け軸や屏風が描かれていたりする。そのシュールな情景にも惹かれるが、なにより魅力的なのはくすんだ色合いとモケっとした筆運びだ。ほしいと思った。が、その絵はすでに売約済み。
2011/01/08(土)(村田真)