artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
ゴッホ展──こうして私はゴッホになった

会期:2010/10/01~2011/12/20
国立新美術館[東京都]
「こうして私はゴッホになった」のサブタイトルどおり、同時代の背景を紹介しつつ、いかにして画家のゴッホは誕生したのかを紹介する展覧会。天才と言えども、まったく100%のオリジナルではなく、さまざまなものから影響を受けている。とりわけ、インスタレーションやCGによる、ゴーギャンと共同生活をした黄色い家の再現展示が興味深い。2階の部屋は有名な絵画《アルルの寝室》にもなっており、意図的に室内空間を歪めて描いたものだと思っていたが、再現された平面図を見ると、もともと部屋が不整形だったことが判明したからだ。
2010/12/16(木)(五十嵐太郎)
眼差しと好奇心 Vol.6

会期:2010/11/24~2010/12/25
ミヅマ・アクション(5F)[東京都]
ディレクターの三潴末雄が選んだ20代の4作家のグループ展。注目したのは、プールで戯れる数百人の人間をF15号のキャンヴァス40枚に描いて並べた幸田千依の《代々木・相関図・インターネット》という大作。1枚でも絵として成り立つし、40枚で1点と数えてもいいし、これから縦横に増殖していくことも可能という、それ自体がインターネット的ゆるさと広がりを備えた作品だ。
2010/12/16(木)(村田真)
岡本瑛里 展「謡にまみえに」

会期:2010/11/24~2010/12/25
ミヅマ・アクション(2F)[東京都]
東京藝大大学院に在籍する23歳の作家による油彩とアクリル併用の絵画3点に、鉛筆のドローイング数点を加えた展示。いずれも薄暗い森のなかで童子と幻獣みたいなものがもつれあっている図で、古典的な技法による細密な描写と鮮やかな色彩で独自の世界を築いている。これは時間かかるだろうなあ、会場で本人が公開制作してるくらいだから、きっと間に合わなかったんだろう。このまま精進して道をきわめてほしいと思う反面、すでに完成の域に達した世界を一度ぶっ壊してほしいとも思う。
2010/12/16(木)(村田真)
青田真也

会期:2010/11/27~2010/12/27
青山|目黒[東京都]
おたふくの面、熊や鷲などの木彫りの置物、将棋盤と駒などの表面を削って滑らかにし、色や表示を消したオブジェ。サッカーボールや樹脂製ボトルは元のかたちが残っているのでわかりやすいが、単なる黒い円盤がレコードだとわかるまでは少し時間がかかり、壁に貼られた白い紙がなんであったのかはいまだにわからない。そして、その隣にあった合板が、表面を削った板かと思ったら、壁そのものを削ったものだとわかったときの感激。その奥にはギャラリーの照明のスイッチを削った作品まであった。こうなるともう作品探しは止まらない。スタッフの服や顔まで削られてないか見てしまうのだ。ともあれ、ものの表面を問題にするのは絵画や彫刻の原点だし、もの派にも通じるし、でもどこかポップだしコンセプチュアルだし、実に幅広い問題を提起してくれる作品。
2010/12/16(木)(村田真)
山荘美学 日高理恵子とさわひらき

会期:2010/12/15~2011/03/13
アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]
自宅庭の百日紅(さるすべり)を、見上げる角度で描く日高理恵子は、安藤忠雄設計の新館で5点を出品。館蔵品のモネと同室で展示され、同じ絵画というジャンルながら、色遣い、構図、表現法など、さまざまな意味で対比的な展示を行なった。空間に対して大きめの作品を持ち込んで、観客が作品を凝視するよう誘導したり、作品を高い位置に設置することで、空間の垂直性を意識させる手法も見事だった。一方、さわが8作品の展示を行なったのは、古い洋館の本館。自室を舞台にした映像作品は、本館のアンティークなインテリアと相性抜群で、くつろいだ気分で作品世界に没入することができた。また、本館に展示されている民芸の器とも違和感なく馴染んでいた。規模的には小さくとも、考え抜いた展示により濃密な体験を提供した本展。キュレーションの妙を味わいたい人におすすめだ。
2010/12/15(水)(小吹隆文)


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