artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

朝倉摂 展「アバンギャルド少女」

会期:2010/09/10~2010/11/07

BankARTスタジオNYK[東京都]

今年88歳(てことは10年前に死んだオヤジと同い年だ)の、まさに「超少女」。初期の挿絵や絵本の原画もあるが、メイン展示はやはり舞台美術。といっても実際に舞台で使われた大道具は残ってないので、2分の1の縮小モデルや大きく引き延ばした舞台写真、記録映像、それにスケッチの類を公開している。そのスケール感や見せ方は建築展に近い。それにしてもすごい量だ。80年代には年に50本以上の舞台美術をこなしたこともあるというから驚く。毎週1本ずつ新しい舞台美術を考えていたことになる。やっぱり数をこなさなくちゃね。

2010/09/13(月)(村田真)

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吉田重信「心の虹」

会期:2010/09/13~2010/09/25

楓ギャラリー[大阪府]

普段はガラス張りの入口から展示の様子が見える楓ギャラリーだが、本展ではガラスを真っ赤に塗り潰しており中が見えない。展示室に入ると室内は真っ暗。照明は入口から一番遠い角に灯る赤いランプだけだ。しばらく経つと目が慣れてきた。床には子ども用の靴が無数に並んでいて、どれも赤い光の方を向いている。その情景はさまざまな解釈が可能だ。例えば、火の前で暖を取る人々、礼拝、弔いの儀式、小さな希望にすがる群衆……。また、時期が時期だけに9.11のことを連想したし、昨今頻発する幼児虐待事件も思い出した。多義的な解釈を受け入れる懐の広さが本作の魅力だ。靴を集める際に地域との連携も図りやすい作品なので、プロジェクトとして各地で開催されれば良い思う。

2010/09/13(月)(小吹隆文)

黄金町バザール2010

会期:2010/09/10~2010/10/11

京急日ノ出町から黄金町間の各所[東京都]

かつての売春宿をアートスペースに変えて行こうという黄金町バザール。売春宿はたいてい2階建ての狭いスペースのため、空間的にもコンセプト的にもそれなりに考えて作品をつくらなければならない。最優秀作品(勝手に決めました)は、コインと石鹸を床に映し出した志村信裕の映像。彼は路上にも赤い靴が踊る映像を見せている。お金、石鹸、赤い靴……どれもこの地と関係のあるものばかりだ。

2010/09/12(日)(村田真)

清水寛子 展

会期:2010/09/11~2010/09/12

長者町アートプラネット[東京都]

横浜の関内駅をはさんだ両側で開かれる「関内外OPEN!」に合わせた企画。長者町アートプラネット(CHAP)は伊勢佐木町の近くのビルを改装したアートスペースで、今回は暫定オープン。清水は影絵のアニメーションと実物を組み合わせたインスタレーションを見せている。おもしろいのは本の上からアニメを投影した作品。ページをめくるのに合わせてイメージも動いていく仕掛けで、アニメの原点であるパラパラマンガを思い出させる。

2010/09/12(日)(村田真)

3331アンデパンダン

会期:2010/09/08~2010/09/19

3331 Arts Chiyoda[東京都]

東京に新たに生まれたアートセンター「3331 Arts Chiyoda」で催されたアンデパンダン展。3331の大きな特徴であるホワイトキューブに、全国から集まった200名以上の出品者による300点以上の作品が立ち並んだ展観はアンデパンダンならではの雑然とした熱気を放っていた。もちろん、それは玉石混交にはちがいないが、それにしてもそうした有象無象による表現への欲望を一カ所で受け入れる場が東京の中心に生まれたことの意味はかなり大きい。美術館や画廊が次々と乱立されていく一方で、そうした制度に乗らない表現は、基本的には野放しにされたままだったからだ。このアンデパンダン展によって、今後知られざるアーティストが新たに発見されることへの期待は高い。個人的に気になったのは、瀬戸内寂聴の言葉をただ抜き出した高屋聖子、既成の地形図をちぎって日の丸に再構成した井川優子、知的で難解な言葉の語感から、それらのイメージを妖怪として図像化した島本了多。とくに島本は、「ジェンダー」から筋肉ムキムキのマッチョな妖怪を、「ジャーゴン」からゴーヤのようなブツブツ感を、それぞれ連想するなどして、美術関係者にありがちな知的なスノビズムをけろりと批判してみせた。「スノビズム」や「アンデパンダン」はどんな妖怪になるのだろうか?

2010/09/12(日)(福住廉)