artscapeレビュー

吉田重信「心の虹」

2010年10月01日号

会期:2010/09/13~2010/09/25

楓ギャラリー[大阪府]

普段はガラス張りの入口から展示の様子が見える楓ギャラリーだが、本展ではガラスを真っ赤に塗り潰しており中が見えない。展示室に入ると室内は真っ暗。照明は入口から一番遠い角に灯る赤いランプだけだ。しばらく経つと目が慣れてきた。床には子ども用の靴が無数に並んでいて、どれも赤い光の方を向いている。その情景はさまざまな解釈が可能だ。例えば、火の前で暖を取る人々、礼拝、弔いの儀式、小さな希望にすがる群衆……。また、時期が時期だけに9.11のことを連想したし、昨今頻発する幼児虐待事件も思い出した。多義的な解釈を受け入れる懐の広さが本作の魅力だ。靴を集める際に地域との連携も図りやすい作品なので、プロジェクトとして各地で開催されれば良い思う。

2010/09/13(月)(小吹隆文)

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