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美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:川北ゆう

会期:2010/07/02~2010/07/28

INAXギャラリー[東京都]

すでにオープンしているのだが、川北ゆうの東京での初めての個展。水と風の流れ、温度や湿度など自力ではどうしようもない自然現象との関係によって完成する作品はいつも実験的で新鮮な印象を与え、想像を掻き立ててやまない。涼しげな印象もあり、暑いいまの時季に見るのもきっと気持ちが良いだろう。

2010/07/15(木)(酒井千穂)

長島有里枝「SWISS+」

会期:2010/07/02~2010/08/04

白石コンテンポラリーアート[東京都]

同じ白石コンテンポラリーアートの2F会場では、長島有里枝の新作展が開催されていた。「2007年に滞在したスイスのVillage Nomadeで撮影した花の写真とインスタレーションによる小さな展覧会」である。「インスタレーション」というのは、銀紙を壁に貼付けて「紙製の鏡」を作り出したもので、そこに観客の顔がぼんやりと映り、横に貼られたプリントと共鳴して面白い効果をあげていた。ほかにもゲルハルト・リヒターの写真が掲載された展覧会カタログに花をあしらった「リヒターの少女と野生の花」、祖母が遺した薔薇の写真をモチーフにした「祖母の花の写真とコンセントのインスタレーション」といった作品もあり、単純なスナップというよりも視覚的な体験の再構築という側面が強まってきている。そのことを、どのように評価していけばいいのかは、もう少し様子を見ないと分からないが、以前のストレートな長島の写真のスタイルとはかなり異質な印象を受けるのはたしかだ。『群像』に連載した作品をまとめた短編集『背中の記憶』(講談社、2009)を刊行するなど、仕事の幅が広がりつつある。今後は写真とテキストを重ね合わせるような試みも出てくるのではないだろうか。会場で先行販売されていた写真集『SWISS』(赤々舎)でも、滞在中の日記と写真とがコラボレーションされていた。同世代の蜷川実花などと比較すると、決して派手な動きではないが、着実に写真作家としての歩みを進めているということだろう。

2010/07/13(火)(飯沢耕太郎)

ウィリアム・エグルストン「21th Century」

会期:2010/07/02~2010/08/04

白石コンテンポラリーアート[東京都]

原美術館に続いて、銭湯を改装したユニークな会場で知られる谷中の白石コンテンポラリーアートでも個展を開催したウィリアム・エグルストン。『美術手帖』(2010年5月号)でも特集が組まれ、時ならぬブームが来ているようだ。それはこの写真家の現実世界へのアプローチの微妙な角度が、いまの空気感にぴったりしているからではないだろうか。過度に感情的ではなく、かといって突き放したクールな描写でもない。居心地がよいようで、実はかなり不安定で怖い部分もある。その絶妙なバランス感覚は、今回の近作展でも充分に発揮されていた。作品を見ながら気づいたのは、かつてのような主題となる被写体が画面の中心におかれているのではなく、より希薄に分散する傾向が強まっていること。壁、窓、地面などが大きな割合を占めていて、何を狙ったのか判然としない写真がけっこう多い。だがそれが逆に写真につきまとう「ノスタルジア」を中和し、リアルな皮膚感覚を呼びさますことにつながっている。その徹底した事物の表層へのこだわりは、おそらく日本の若い写真家たちにも強い影響を及ぼしていくのではないだろうか。とはいえ、エグルストンはひとりいればいいわけで、むしろ別種の視覚的システムの構築をめざしていくべきだろう。

2010/07/13(火)(飯沢耕太郎)

マン・レイ展

会期:2010/07/14~2010/09/13

国立新美術館[東京都]

出品点数400点以上という大回顧展。だが、比較的小さな写真が圧倒的多数を占め、絵画が少ないのが残念。それにしてもマン・レイって粋な洒落者だったんだねえ。

2010/07/13(火)(村田真)

中谷由紀 個展「庭をのぞく」

会期:2010/07/16~2010/08/01

カフェ&ギャラリーアトリエとも[京都府]

中谷のファンだという作家、中村協子によって企画された展覧会。DM掲載の作品《ケイトウさん》と今展のタイトル「庭をのぞく」のインパクトがまずすごい。8年ぶりの個展だそうで、私は今展で初めて作品を目にしたのだが、毒っ気とユルい雰囲気のバランス、描かれた動物のユーモラスな表情、豆やビワなどユニークなモチーフ、どれも実に楽しい。綿布にアクリルグァッシュで描いた作品は染色のあじわいがあり、柔らかな色彩の印象。ホワイトキューブではないこの会場の個性的な空間にもよく似合っていた。

2010/07/10(土)(酒井千穂)