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美術に関するレビュー/プレビュー

ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち

会期:2010/07/06~2010/08/29

京都市美術館[京都府]

ボストン美術館の新館建設とヨーロッパ絵画部門の拡大、増築にともなって貸し出された16世紀~20世紀前半の絵画80点を展示。ベラスケス、ヴァン・ダイク、レンブラントから、コロー、ミレー、マネ、モネ、セザンヌ、ルノワール、ゴッホ、ピカソと美術の教科書に載る名が勢揃いした展覧会。マネの隣にベラスケスの作品があるなど、異なる時代のものが並列しているのは肖像画、宗教絵画、風景画など、会場が主題ごとのセクションに分かれているため。モネの風景画のみ11点が並ぶ空間「モネの冒険」は圧巻の見応えだ。《プールヴィル、ラ・カヴェの道》(1882)、《アンティーブの古城》(1888)など、海辺の光景を描いた絵画に見られる色彩の調和、色の重なりや筆の動きは特に生々しく、水と空の移りゆく表情の奥深さに魅了される。炎天下で行列に並ぶことを考えると気が遠くなりそうだが「名画フルコース」の満足感と充実感はたしかに他に代え難い。

2010/07/03(土)(酒井千穂)

松本良太展

会期:2010/06/28~2010/07/03

O gallery eyes[大阪府]

「Art Couer Frontier 2010 #8」のアーティストトーク・イベントのあとで立ち寄った。どれも人物をモチーフにした色鉛筆のドローイングなのだが、立体を切り開いた図形の展開図のようなイメージで、目、鼻、口などは描かれておらず、背景の彩色もない。図記号のデザインのように明快な色面構成なのだが、塗りつぶした画面の筆跡の表情は生々しく、配色から展示された位置まで、どれもバランスがビミョーというか絶妙というか、夢のなかの出来事のように不思議な雰囲気に覆われている。不気味で心許ない印象にかえって気持ちを引き摺られる魅力があり、今後の発表も楽しみになった。

2010/07/03(土)(酒井千穂)

日本の画展2010

会期:2010/06/29~2010/07/04

ギャラリー健[埼玉県]

額縁工場見学ツアーのため埼京線中浦和駅に初めて降りたら、目の前にギャラリーがあったので入ってみた。日本画展をやってました。日本画は津々浦々にまで浸透しているなあ、と合点(画展)。

2010/07/03(土)(村田真)

Art Couer Frontier 2010 #8

会期:2010/06/25~2010/07/24

アートコートギャラリー[大阪府]

アーティスト、キュレーター、コレクター、ジャーナリストなどがそれぞれ推薦者となり、出展作家を1名ずつ推挙して開催される恒例の企画グループ展。今年は、入谷葉子、埋橋幸広、内田文武、大西康明、木内貴志、キスヒサタカ、黒宮菜菜、佐川好弘、佐藤貢、田中朝子、宮本博史、森末由美子ら12名が出展した。会場で特に目を引いたのは、養蜂家を生業とする埋橋幸広の「ミツバチ・インスタレーション」。ギュラリーの中庭に巣箱が置かれ、蜂が飛び交うスペースを鑑賞者が実際に体験できるのがユニークだが、窓際には詩やオブジェが並び、叙情性に溢れる世界を展開していた。佐川好弘の今後の展開も楽しみだ。屋外に展示されたバルーンの《愛》は実に巨大でアツい。全体的に質が高く、見応えのある展覧会だった。

2010/07/02(金)(酒井千穂)

ロトチェンコ+ステパーノワ─ロシア構成主義のまなざし

会期:2010/07/03~2010/08/29

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

ロシア構成主義の巨匠ロトチェンコは知っていたが、彼の妻ステパーノワも優秀な作家だったとは、恥ずかしながら知らなかった。2人の代表作が見られた本展は、絵画、立体、舞台美術、書籍、ポスター、プロダクト、建築、写真など170点が並び、質・量ともに大いに充実。良い意味で予想を裏切ってくれた。作品はロシアのプーシキン美術館及び遺族の所蔵品で、前者もほとんどが遺族から寄贈されたものだ。前衛美術はソビエト時代に弾圧されたはずだが、遺族はどうやって作品を守ってきたのだろう。公にしなければ当局も黙認してくれたのか、それともレジスタンス的に密かに守り続けたのか。ロシアから来日した学芸員に質問したのだが、こちらの真意がうまく伝わらなかったのが残念だ。

2010/07/02(金)(小吹隆文)

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