artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
Trouble in Paradise 生存のエシックス

会期:2010/07/09~2010/08/22
京都国立近代美術館[京都府]
京都市立芸術大学の創立130周年記念事業に協賛して開催された企画展。アートと生命、医療、環境、宇宙などの諸学問が交流する12のプロジェクトを通して、脱領域的な表現(=未来の芸術?)の可能性を問うた。実際、展示物を見ると、光と音の変化が脳の血流に与え、その数値がフィードバックして光と音が変化していくシステムや、二重軸回転する巨大な円盤で身体の感覚を撹乱する装置、切り立った山脈のようなインスタレーション、JAXAとの協働で無重力空間における庭のあり方を探ったプロジェクトなど、およそ美術展らしくない造形物が並んでいる。同時に、多数の講演会、シンポジウム、ワークショップなどが組まれており、展示と同等の比重がかけられているのも本展の特徴である。こういう挑戦心に満ちた企画は、画廊ビジネスでは不可能だし、アートセンターの手にも余る。まさに美術館以外では行なえない先進的な挑戦として評価されるべきであろう。正直に言うと若干アカデミズム臭が気になったのだが、それは筆者の偏見かもしれない。
2010/07/08(木)(小吹隆文)
青木孝子展

会期:2010/07/01~2010/07/30
日仏会館エントランスホール[東京都]
荒目の麻布に波涛か岩肌を思わせるマチエールをつくり、そこに色彩を施した絵画。情感あふれる抽象という意味では20世紀、いや昭和の残り香がする。ところで、今日見た個展は3本とも女性作家で、世代も30~50代とバラけているが、その最年長が今年56歳になる青木さん。なぜ知ってるのかといえば、彼女はぼくと美大の同級生だったからだ。ごめんね年をバラして。で、なにをいいたいのかというと、年齢が上がるほど作品の性差が感じられなくなるということだ。誤解を恐れずにいってしまえば、3人のうち最年少の泉イネは女性でしか考えないようなことを思いつき、いかにも女性らしい絵を描くが、青木の絵は作者が男だといわれても納得してしまうだろう。青木が男っぽいということではなく、彼女が絵を学んだのは男が圧倒的多数を占める時代であり、だから男の感性を基準にするしかなかったのだ。ところがいまは時代が変わり、美大では女性が圧倒的多数に逆転したので、男性画家の絵が女性らしくなったといえるかもしれない。
2010/07/07(水)(村田真)
泉イネ展「未完本姉妹 影の冬光」

会期:2010/07/07~2010/08/07
MA2 Gallery[東京都]
小山登美夫ギャラリーと同時開催のシリーズ展。本姉妹をめぐるさまざまな断片が絵に描かれている。絵は細密画のようにていねいに描いた紺泉風と、余白を残して大ざっぱに描いた泉イネ風があって、どちらも捨てがたい。よく見ると、紺風はキャンヴァスを木枠の裏側で止めてるのに、イネ風は木枠の側面で金の釘を使って几帳面に止めてるのがわかる。こうしたスタイルの選択といい、本姉妹という物語設定といい、どうも男には理解しきれないところがあって、そこが魅力なんだろうなあきっと。
2010/07/07(水)(村田真)
a consideration for mirrors 鏡について

会期:2010/06/24~2010/07/10
工房“親”[東京都]
世界中で撮り集めた鏡をのぞく人たちのポートレート。写真にはその人の鏡像も写っているので、ダブルポートレートといってもいい。だが、実物の鏡を使ったインスタレーションが展示されてることからもわかるように、彼女の鏡に対する偏愛が前面に出てしまい、それ以上に鏡と写真の織りなす迷宮世界や、場所や人との関係性には踏み込んでいるようには見えず、どこか消化不良の感は否めない。
2010/07/07(水)(村田真)
森靖「好きにならずにいられない」
会期:2010/07/03~2010/07/31
山本現代[東京都]
木彫によって巨大な異形の造形を作り出す彫刻家・森靖の個展。『彫刻-労働と不意打ち』展(東京藝術大学美術館、2009年8月8日~8月23日)で発表されていた《Much ado about love-Kappa》(2009)に加え、今回も画廊の空間を埋め尽くさんばかりのスケール感あふれる作品を発表した。河童、龍など神話的なモチーフを、マリリン・モンローや性器など通俗的なイメージと掛け合わせながら彫り出すが、なにしろその大きさとボリュームがよりいっそう極限化されていたのが痛快だ。じっさい、天に昇る龍の口先は天井に突き刺さっており、いっそこのままビルを貫いて駆け上がっていくのではないかとさえ思わせる。ポピュラー音楽の楽曲から採用した展覧会のタイトルも、彫刻の世俗性をうまく言い当てている。
2010/07/06(火)(福住廉)


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