artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
増山士郎 展 Intervention

会期:2010/06/12~2010/07/19
市原市水と彫刻の丘[千葉県]
昨年の第1回所沢ビエンナーレで話題を集めた増山士郎の個展。展覧会の会場で寝泊りしながらアルバイトに出かけていく様子を見せた《アーティスト難民》(2009年)のほか、展覧会のオープニングに訪れた客を個室化したカウンターでもてなす《Parky Party》(2010年)、警察による違法駐車取締りから車を守る《合法駐車》(2000年)、灰皿が設置されていない渋谷駅のモヤイ像前に球体状の剣山を置いてシケモクを生ける灰皿として機能させた《生けモク》など、増山の代表的な作品やプロジェクトを振り返る構成だ。新作《crossing the border》は、オランダのスキポール空港内で輪ゴムをセキュリティ・チェックを通過することなく飛ばすパフォーマンスを記録した映像作品。クリアボックスにうやうやしく収納された輪ゴムがなんともおかしい。全体的には、社会に批判的に介入する増山の真骨頂が表わされていた展示だったように思う。しかし、この会場は千葉の山奥の湖畔に立てられた美術館。文字どおり人里離れた美術館で見せられる社会介入型のアートに違和感を覚えたのも事実だ。もちろん田舎が社会ではないというわけではないが、社会に介入する増山の作品の魅力を最大限に引き出すのであれば、むしろ都心の美術館のほうがふさわしい。何より増山が介入する現場はつねに都市のど真ん中にあるのだから。ぜひとも都市型の美術館に巡回してほしい。
2010/07/17(土)(福住廉)
パフォーマンス「からだをどうぞ~音とダンスの即興セッション」

会期:2010/07/16~2010/07/17
shin-bi[京都府]
サウンドアーティスト鈴木昭男とダンサー宮北裕美の即興パフォーマンスライブ。ちょっかいを出して邪魔するように宮北の動作にあわせて自作の楽器を鳴らしたり、それを床に落としたりする鈴木さんのいたずらっ子のような表情がチャーミングでクスクスという笑い声も会場のあちこちから聞こえる。ダンサーのしなやかな体の動きや姿勢の美しさにも見蕩れてしまった。
2010/07/16(金)(酒井千穂)
大竹夏紀 展

会期:2010/07/12~2010/07/17
GALLERY b. TOKYO[東京都]
生き物のように飛び跳ねる髪の毛と大きな目、そしてまぶしいほどの色彩。いかにもアニメチックなアイドルを描いた大きな絵だが、じつは絹にロウケツ染めで描いているという。鮮やかな色彩と光沢を放つ絹の艶めかしさが、モチーフとなっているアイドルの華やかさを際立たせているようだ。漫画からアニメ、そしてネットへと発展していったサブカルの歴史の流れを、古来からの染色技法を徹底することによって、逆行させるところがおもしろい。
2010/07/15(木)(福住廉)
川俣知子 日本の少女たち

会期:2010/07/12~2010/07/17
Gallery K[東京都]
背景を描き込まないまま、シンプルな線でセーラー服の少女などを描いた絵。彼女は電車の車内で痴漢行為の被害に遭っているが、よく見ると目玉には「¥」のマークが入っており、口元には笑みさえ浮かんでいる。90年代的な援交文化の再現とも言い切れない、なにやら得体の知れない謎を見る者に残す絵だ。
2010/07/15(木)(福住廉)
武盾一郎 Real FantASIA

会期:2010/07/09~2010/07/18
gallery TEN[東京都]
ストリートのアーティストとして知られる武盾一郎の初個展。新宿西口や渋谷の路上、神戸の被災地で絵を描いては発表してきた武にとって、画廊での個展は初めてだという。展示されていたのは緻密に描き込まれたペン画で、その細密な線の集積と空虚な余白の対比が美しい。一見すると近頃流行の細密画の一種にしか見えないが、武の制作と発表の場の大半が路上だったことを考えると、この対比は鬱積した内面とそれを容易には受け入れない無情な社会の対立を表わしているように見えなくもない。画廊制度に則ることなく、剥き出しの路上で絵を描くことの厳しさを見る者に突きつける、痛々しいまでの気迫にあふれた展示だった。
2010/07/15(木)(福住廉)


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