artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ロトチェンコ+ステパーノワ──ロシア構成主義のまなざし

会期:2010/04/24~2010/06/20

東京都庭園美術館[東京都]

絵画から建築、グラフィック、家具、ファッション、舞台美術、写真まで170点の出品。ここまで手を広げられると焦点がボケてしまい、結局なにをやったのか、なにがやりたかったのかよくわからなくなってくる。ロシア構成主義のとっつきにくさはそのへんに由来するのかも。しかもその後ソ連といういびつな国家に吸収されていくわけだから、虚しいよなあ。出品作品の大半は1915~30年のおよそ15年間に絞られる。これがロシア構成主義の活動期間と見ていいが、ふたりとも50年代まで生きたのだから、その後20年以上をスターリン下のソ連でどのようにすごしたのだろうという疑問も。

2010/06/01(火)(村田真)

黒河兼吉 陶磁器デザイン展

会期:2010/06/01~2010/06/13

アートライフみつはし[京都府]

シャープで洗練された造形性が際立つ陶芸展だった。作品は、花瓶、一輪挿し、ランプシェードなど。すべて型により制作されており、工芸品というよりはプロダクト・デザインと呼ぶべきエッジの効いた仕上がりだった。筆者が見る限り、陶芸家には手びねりの不規則な歪みや風合いを重視する人が多いようだ。そんななか、一貫して硬質な楷書の美を追求し続ける黒河の存在は貴重だと思う。

2010/06/01(火)(小吹隆文)

福村真美 展

会期:2010/06/01~2010/06/13

ギャラリーモーニング[京都府]

前回の個展では琵琶湖畔の風景やプールのある風景など、水辺を描いた作品が印象深かったが、新作では一転して動物園がテーマになっていた。昼寝するチーターや3羽のフラミンゴを描いた牧歌的な作品はその典型だ。しかし、私が気になったのは、主がいないペンギン用の水槽と思しき風景。エメラルドブルーを基調とする水面と灌木の緑がとてもみずみずしい。やはりこの人の真骨頂は青や緑系の使い方にある。

2010/06/01(火)(小吹隆文)

渡辺信子 展

会期:2010/05/31~2010/06/05

信濃橋画廊[大阪府]

4室を有する信濃橋画廊のうち、メイン以外の小展示室3つで個展を開催。木枠に布を張った彼女ならではの作品だったが、点数は控えめで部屋ごとに色遣いを変えていた。作品による空間の変容がテーマで、作品単体ではなくコーディネートが重視されていたのだ。見慣れた展示室がいつもとは少し違って見えたのが印象的だった。こういう試みを日常的空間、例えば個人の邸宅や住宅展示場で行なったらどうなるのだろう。さぞかしユニークな展覧会になると思うのだが……。

2010/05/31(月)(小吹隆文)

若木くるみ「モーターさま」

会期:2010/05/25~2010/06/06

ギャラリー恵風、ギャラリー其の延長[京都府]

若木くるみの2会場同時開催の個展。会期中、作家が別会場のランニングマシンで毎日ひたすら走り、そのエネルギーを充電した蓄電池によってギャラリーに展示された作品が作動する。電池をセットし、スイッチを入れると、温度計が回転しだし空っぽの金魚鉢をかき混ぜたり、びくともしない体重計を引っぱったりと“しょーもない”シャレのようなオブジェの数々が動き出す。ただ、しばらくするとブーンというモーター音も弱々しくなり、ぴたりと止まってしまう。その微弱な力と消費の早さを目の当たりにするのでなんとも切ない。途中で動作が停止しても新しい電池に交換するのはもったいなくて心苦しい気分になるほど。会場には「若木くるみ蓄蔵エネルギー放出の記録」という日々の基礎代謝や体脂肪率などを計測し記録した表も張り出されていた。訪れたときはまだ数日分の記録だったが、体重や筋肉、体脂肪率の激しい変動を示す数字に驚いた。若木が毎日走るランニングマシンはそれ自体が版木にもなっていて、走りながら版画作品が出来上がっていくということだったが、それが展示された最終日に見に行くことが叶わず残念。自らの身体を消耗させてひたすら走り、一見バカバカしい作品に一心にエネルギーを注ぐ作家の健気な姿勢が強烈に印象に残った。運動によって体力や精神力を消耗する代わりに体力や筋力がアップしてスマートになっていく作家の身体と版画や版木が重なるのが面白い。
ギャラリー恵風=http://keifu.blog86.fc2.com/blog-entry-125.html
ギャラリー其の延長=http://nashinokatachi.com/news/news.html

2010/05/30(日)(酒井千穂)