artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

光の場──大庭大介

会期:2009/03/06~2009/04/04

magical, ARTROOM[東京都]

画面を正方形に分割したなかに、パール系の反射する絵具で螺旋を描いている。見る角度によって色も輝きも異なって見える。これは見事。でも図版にするとツライだろうなあとよけいな心配をする。そういえば京都造形の「戦争と芸術」展では同じくパール系の絵具による、しかし風景みたいな絵を見かけたなあと思ったら、同時開催のSCAIザ・バスハウスのほうに風景を出しているそうだ。見に行かなきゃ。

2009/03/21(土)(村田真)

ワンダーシード2009

会期:2009/03/07~2009/03/29

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

若手アーティストの公募入選作品展示販売会。と書くと安っぽいが、昨年はほぼ完売という快挙をなしとげた。そりゃ異常ですよ。金融危機を経た今年はやはり昨年ほどではないけれど、それでもけっこう売れている。ぼく的には岸本幸三と工藤春香の作品に食指を動かされた。でも個人的にいつも金融危機なので買わないが。

2009/03/20(金)(村田真)

このはな咲かせましょう

会期:2008/12/05~2008/12/07

此花区梅香・四貫島エリア[大阪府]

昨年末に大阪の梅香町でのアートプロジェクトに参加した淺井裕介が、同地に長期滞在しながら制作した作品がいまも見れる。道路の白線用の素材を植物のかたちに切り抜き、それらを路上やマンション、廃屋の壁面に焼きつけた。同じ手法で制作した「とまれ」という文字の、なんと生き生きとしていることか。なかでも、未来美術家の遠藤一郎とともに制作した《このはな未来へ》は、商店街の壁面に描いた大作だが、長い板を並べた壁面にバーナーで焦げ目をつけながら線を描くなど、技法に工夫を凝らしながら迫力の画面を作り出した。

2009/03/20(金)(福住廉)

Yusuke Asai“ぐらぐらの岩”

会期:2009/02/21~2009/03/29

graf media gm[グラフメディア・ジーエム][大阪府]

「Masking Plant」や「泥絵」で知られる淺井裕介の新作展。会場内に設置されている小屋の内部を泥絵で埋め尽くすとともに、彼が参加した大阪・梅香でのアートプロジェクト「このはな咲かせましょう」の制作風景を撮影した写真などを発表した。おしゃれ空間に遠慮したわけではないだろうが、これまでの淺井の活動からすると、若干大人しい印象は否めない。もっと大きく、もっと容量のある空間で、たっぷりと時間をかけて制作した作品を見てみたい。

2009/03/20(金)(福住廉)

新国誠一の《具体詩》 詩と美術のあいだに

会期:2008/12/06~2009/03/22

国立国際美術館[大阪府]

視覚詩と音声詩によって抒情詩を相対化した新国誠一の回顧展。グラフィカルに配置した漢字を並べたり、新国本人が朗読した平仮名と片仮名と数字を混在させた詩を聞かせたり、小規模ながらも、新国のユニークな創作活動を一望する堅実な展示になっている。美術と詩、あるいは音楽の領域を横断する前衛芸術にはちがいないが、日本語という誰もが知る言語を素材にしているせいか、鑑賞者をサディスティックにいたぶるような前衛芸術のたちの悪さは微塵も見られない。むしろ、それらの大半は端的におもしろいし、笑えるものであり、もっと見たいと思わせるものばかりだ。おびただしい数の「畳」という漢字を四畳半のかたちに並べ立て、その中心に「炉」の漢字をひとつだけ置いたり、「縞」という漢字を縦方向に無数に並べることによって、その文字と行間のあいだの縞模様を表現したり、意味伝達の手段だけに貶められる文字をその機能から解放するというより、その機能を満たしつつ、文字という具体的な物質の力を前面化させる、その手腕がとてつもなくすばらしい。この展観によって新国の創作活動が再評価されることはまちがいないだろうが、それを前衛詩の現在に生産的に反映させるだけではあまりにももったいない。というのも、新国が夢中になっていた文字的想像力は、部分的ではあるにせよ、たとえば現在のアスキーアートや「脳内メーカー」、あるいは「『タモリ』と『夕刊』は似ている」と鋭く指摘したことがあるトリオフォーによる「NOPPIN新聞」にも共有されているからだ。新国誠一を起源にすえることによって、「物質としての文字」の魅力をアピールする、広い意味でのアート活動が、今後ますます発展することが期待できるのではないだろうか。

2009/03/20(金)(福住廉)

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