artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
今井久美 写真展「カムフラージュ」

会期:2009/03/24~2009/03/29
アートスペース虹[京都府]
制服姿の女子高生たちを真正面から撮影した写真シリーズを出品。画一的な制服と、流行の着こなしや携帯電話のストラップに見られるささやかな自己主張を通して、日本人の集団意識と個性の関係性が滲み出る。今井は、制服が欠点や自身のなさをカムフラージュしてくれる都合よさと、制服により自分の本音さえ見えないことにして生きている(ように見える)彼女たちに興味を覚えたのだという。制服を巡る相反・補完関係は女子高生に限った話ではないので、今後対象を広げていけば今より更に深みのあるテーマが見つけられるかもしれない。
2009/03/24(火)(小吹隆文)
ラディカル・クロップス第1回“Floating Islands”

会期:2009/03/23~2009/04/04
exhibit Live & Moris[東京都]
前本彰子のベリーダンスに沖啓介の七弦ベース、大村益三のタイ料理に浜田涼の給仕……。出品作家がそれぞれ特技を生かした悪夢のようなオープニングナイト。は別にして、大村の神をも恐れぬ神棚およびのぞき見趣味的箱庭はもっと評価されていい。
2009/03/23(月)(村田真)
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー展

会期:2009/02/24~2009/05/17
メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]
40台のスピーカーが内側を向いて楕円状に並んでいる。なかに入るとルネサンス音楽の合唱曲が聞こえてくるのだが、40声が個別に録音されて各スピーカーから再生されるので、まるで合唱隊のなかを歩きまわっているような聞え方が体験できるのだ。ヴィジュアル的には退屈だけど、喧噪に満ちた銀座のど真ん中のブランドビル内で、こんなゼータクな体験が無料でできることがすばらしい。
2009/03/23(月)(村田真)
三村昌道 展

会期:2009/03/23~2009/03/28
コバヤシ画廊[東京都]
ほとんどモノクロームに近い絵。抽象的だが、白い点とその影らしきものが描かれているので、塵が下降していく深海の光景かと思ったら、雪の夜だという。そう聞くと「なるほど」で終わってしまいかねないが。
2009/03/23(月)(村田真)
広島!
会期:2009/03/20~2009/03/22
Vacant[東京都]
広島の上空に「ピカッ」と落書きして大目玉を喰らったChim↑Pomが、広島市現代美術館での個展で発表する予定だった作品を原宿で公開した展覧会。飛行機雲で描いた「ピカッ」の映像と写真、実物大の丹頂鶴のフィギュア、そしてことの発端となった中国新聞の記事を模写した作品などを展示した。映像をじっくり見てみて思い至ったのは、青空に薄い線で描かれた「ピカッ」の三文字が、原爆の再現劇として読み取られかねないことは事実だとしても、その一方で、のどかで平和な暮らしを満喫する私たちの現代社会のありようを端的に表現しているということだ。もともと薄い飛行機雲だということを差し引いたとしても、たとえば「ピ」は「ッ」が描かれている頃にはすっかり消えてしまっているほど、三つの文字は、どれもはかない。マンガのオノマトペであれば、シャープな描線によって輪郭が明確に縁取られるのだろうが、「ピカッ」はマンガ的ではあるとはいえ、それほど力強くはなく、むしろか弱い。青空という広大な空間にたちまち呑み込まれてしまう、薄く、細く、短命な描線。これこそ、私たちの時代の原爆美術が内側に抱えている表象不可能性の現われではないだろうか。今回の個展によってChim↑Pomが原爆美術にとっての新たな道のりを切り開いたことはまちがいない。ベッドメリーのように吊るされた千羽鶴のなかで群れをなす丹頂鶴たちは、その未知の道を模索しながら飛んでいく彼ら自身であり、私たち自身でもある。
2009/03/21(土)(福住廉)


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