artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

デトロイト美術館展 ~大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち~

会期:2016/10/07~2017/01/21

上野の森美術館[東京都]

大西洋を渡って、アメリカで収集されたヨーロッパ近代名画を紹介する企画だが、印象派、ポスト印象派、20世紀のドイツやフランスという順番の章立ては教科書をなぞっているようで、あまりにも初心者向けの印象を受けた。ナントカ館展であっても、もう少し独自の視点や新鮮な見せ方を設けてほしい。

2016/11/02(水)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00037034.json s 10130004

東京造形大学創立50周年記念展「勝見勝 桑澤洋子 佐藤忠良──教育の源流」

会期:2016/10/31~2016/11/26

東京造形大学附属美術館[東京都]

授業の始まる前にサクッと見る。創立50周年を記念し、大学設立に尽力した創立者の桑澤洋子、評論家の勝見勝、彫刻家の佐藤忠良の仕事を紹介するもので、3人の手がけた作品や書籍、ポスター、教科書などが展示されている。出展リストを見ると総計85件あるが、そのうち造形大が所蔵しているのは母体の桑沢学園も含めて34件、半分以下しかない。佐藤忠良の作品の大半が故郷の宮城県美術館にあるのはうなずけるが、それにしても造形大がいかにアーカイブを怠ってきたかがわかる。まさか50年も続くと思ってなかったのではあるまいな。

2016/10/31(月)(村田真)

田口芳正『MICHI』

発行:東京綜合写真専門学校出版局
発行年:2016/09/16

田口芳正は1949年、神奈川県鎌倉市生まれ。1977年に東京綜合写真専門学校卒業後、PUT、OWL、FROGといった、写真家たちの自主運営ギャラリーで作品を発表してきた。この写真集には1977~79年の初期作品26点がおさめられているが、そのすべてが、道を歩きながら連続的にシャッターを切って撮影した写真をやや小さめにプリントして、グリッド状、あるいは渦巻き状に配置したものだ。このような被写体の意味性や物語性を潔癖に排除して、「写真とは何か?」を写真によって提示しようとする「コンセプチュアル・フォト」は、田口だけでなく1970年代後半~80年代にかけて活動した多くの若い写真家たちによって共有されていたテーマだった。田口の営みは、そのなかでも「『私』の行為の軌跡を『見る』こと、『撮ること』と『見る』ことの意識化」を推し進めていく強度と純粋性において際立っている。
以前から何度か指摘してきたのだが、自主運営ギャラリーを中心に展開されていた「コンセプチュアル・フォト」、あるいは「写真論写真」にスポットを当て、きちんと検証していく時期が来ているのではないだろうか。確かにあまり目立たない、地味な動きではあったが、写真と現代美術の境界領域を果敢に切り拓こうとした彼らの活動は、相当の厚みを備えたものであったことは間違いない。田口の仕事をあらためて見直しても、40年という歳月を経ているにもかかわらず、みずみずしさが保たれていることに驚かされる。ぜひ美術館レベルでの掘り起こしを進めていただきたい。その第一歩として、この写真集の刊行は大きな意味を持つのではないだろうか。

2016/10/31(月)(飯沢耕太郎)

世界遺産 ラスコー展 クロマニョン人が残した洞窟壁画

会期:2016/11/01~2017/02/19

国立科学博物館[東京都]

「ラスコー展 クロマニョン人が残した洞窟壁画」@国立科学博物館の内覧会へ。考古学のモノもいろいろフランスから持ち込まれているが、うねうねとした洞窟の内部ものぞける1/10模型がデカいこと。そして、洞窟の一部を精密な1/1のレプリカで再現した空間が、建築的な視点から見たときのハイライトである。これが2万年前に人類が体験した闇の空間だと思うと感慨深い。写真ではわからない、激しい凹凸に壁画が描かれたこともよく理解できる。

2016/10/31(月)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00037473.json s 10129072

プレビュー:7つの船

会期:2016/12/01~2016/12/11

出航場所:[上り]名村造船所跡地奥 船着場/[下り]本町橋船着場[大阪府]

『7つの船』は、昨年11月に実施された梅田哲也によるナイト・クルーズ作品『5つの船(夜行編)』の続編。観客は、指定された2箇所の船着場とルート(大阪湾に近い名村造船所跡地からの上りルート/市内中心部の本町橋船着からの下りルート)を選び、水路からしか見ることができない街の裏側を巡りながら、パフォーマンスとも展覧会とも異なる、日常と非日常が交差する体験をすることになる。参加アーティストは、昨年に引き続き、Hyslomと松井美耶子が乗船するほか、ロンドンを拠点に活動するさわひらき、ベルリン在住の雨宮庸介、辰巳量平らのアーティストが新たに参加する。限定された空間、それも船の上という移動しながらの鑑賞は、観客自身の身体経験をも揺さぶるものになるだろう。
*会期は12/01~12/04、12/09~12/11に分かれる。

2016/10/31(高嶋慈)