artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

魔女の秘密展

会期:2016/02/19~2016/03/13

ラフォーレミュージアム原宿[東京都]

西洋の魔女に関する資料を集めているというので意外に面白いのではと思って足を運んだが、焦点がボケており、内容も不十分だった。会場が美術館でないから、貸し出せる絵画の質が低いのは仕方ないにしても、魔女裁判の再現映像とかは、ヘタな現代アート風である。ただし、拷問する器具の迫力はあった。フェルメールがタイトルにある展覧会は彼の1点とその他同時代のオランダ絵画多数の構成になるしかないが、森アーツセンターの「フェルメールとレンブラント」展は、「魔女の秘密」展の直後なだけに安心して見られる。ただし、レンブラントも1点のみだった。大文字としての宗教画や歴史画ではない、サブカルチャー的な題材の絵が発展した17世紀オランダのおさらい的な内容である。

2016/02/29(月)(五十嵐太郎)

久保ガエタン「記憶の遠近法」

会期:2016/01/23~2016/03/13

たこテラス[東京都]

かつて千住地域のシンボル的存在だった「お化け煙突」。1964年に取り壊された千住火力発電所の4本の煙突が、見る角度によって3本になったり2本になったり1本にもなるのかな? とにかく本数が変わって見えるのでそう呼ばれていた。このお化け煙突のことを知り、そこから物語を紡ぎ出して作品化したのが久保ガエタン。会場のたこテラスを訪れると、横のドアの鍵を開けてくれる。入ると、路地のような中庭のような内部なのか外部なのかわからない通路に沿って、これも部屋のような物置のようなよくわからない空間がいくつか並び、そのなかに解体されたお化け煙突の素材を含む陶による300分の1の煙突模型や、東電から借りた火力発電所の模型、作者の曾祖父が持っていた戦艦の模型、お化け煙突の青焼き図面、ボルドー近郊に住むガエタンの祖父のルーペ、デュシャンを思わせる自転車の車輪、火力発電所で働いていた人のインタビュー映像などが展示されている。お化け煙突に触発されたのはわかるけど、時空が飛んで煙突に直接関係ない資料が示されたりしているのでつかみどころがない。そもそもたこテラスという妙な場所を会場にし、チラシに向かいの公園にあるタコ型の遊具のイメージをあしらっているので、てっきりタコ関連の展覧会かと思ったくらいだ。どうせならタコとお化け煙突を合体させてほしかった。

2016/02/29(月)(村田真)

大巻伸嗣「くろい家」

会期:2016/01/30~2016/03/13

くろい家[東京都]

北千住の駅から10分ほど、狭い路地を入ると見えてきた黒塗りの3階建ての家が目的の地。受付でまず2階に通され、真っ暗な部屋に導かれる。そこは手すりのついた桟敷席になっていて、正面奥の天井から薄光が射し、ときおり白煙とともに大きなシャボン玉が噴き出してくるのが見える。白いシャボン玉はゆっくり降下して1階に消えていく。再び受付に戻ると今度は1階奥の部屋に案内される。そこはいま2階で見てきた白煙やシャボン玉が床に落ちるまでを見られるという趣向。これは昨年の越後妻有での廃屋を使った《影向の家》と基本的に同じ構造だが、越後妻有では廃屋を使った似たような雰囲気の作品が多くて目立たなかったのに対し、こちらのほうは下町情緒の漂う場所込みで印象深かった。でも最近、シャボン玉職人っぽくなってないか?

2016/02/29(月)(村田真)

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プレビュー:林勇気「電源を切ると何もみえなくなる事」

会期:2016/04/05~2016/05/22

京都芸術センター[京都府]

パソコンのハードディスクに大量にストックした写真画像を、1コマずつ切り貼りして緻密に合成することでアニメーションを制作する映像作家、林勇気。緻密な作業の膨大な積み重ねによって制作される作品は、個人の所有する記録媒体やネット上の共有空間に日々膨大な画像が蓄積され、共有され、消費されていくというメディア状況を可視化するとともに、ポスト・インターネット時代の知覚や身体感覚についての問いを投げかけている。「電源」をキーワードにした本個展では、電源を切る行為によって消滅してしまう、映像という非物質的なメディウムの存在的な危うさに注目する。それはまた、電源のON/OFFという行為の身体性と映像との関わりを再考する機会にもなるだろう。

2016/02/29(月)(高嶋慈)

陸前高田のたからもの

会期:2016/02/27~2016/03/27

名古屋市博物館[愛知県]

名古屋市博物館の「陸前高田のたからもの」展へ。3.11で被災した陸前高田の博物館の資料を紹介。その修復の方法や文化財レスキューの状況も。現在、博物館は廃校で修復を継続中。モノだけでなく、津波でコンピュータがやられ、所蔵リストのデジタルデータを失ったことも博物館として多大なダメージ。

2016/02/28(日)(五十嵐太郎)

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