artscapeレビュー
久保ガエタン「記憶の遠近法」
2016年03月15日号
会期:2016/01/23~2016/03/13
たこテラス[東京都]
かつて千住地域のシンボル的存在だった「お化け煙突」。1964年に取り壊された千住火力発電所の4本の煙突が、見る角度によって3本になったり2本になったり1本にもなるのかな? とにかく本数が変わって見えるのでそう呼ばれていた。このお化け煙突のことを知り、そこから物語を紡ぎ出して作品化したのが久保ガエタン。会場のたこテラスを訪れると、横のドアの鍵を開けてくれる。入ると、路地のような中庭のような内部なのか外部なのかわからない通路に沿って、これも部屋のような物置のようなよくわからない空間がいくつか並び、そのなかに解体されたお化け煙突の素材を含む陶による300分の1の煙突模型や、東電から借りた火力発電所の模型、作者の曾祖父が持っていた戦艦の模型、お化け煙突の青焼き図面、ボルドー近郊に住むガエタンの祖父のルーペ、デュシャンを思わせる自転車の車輪、火力発電所で働いていた人のインタビュー映像などが展示されている。お化け煙突に触発されたのはわかるけど、時空が飛んで煙突に直接関係ない資料が示されたりしているのでつかみどころがない。そもそもたこテラスという妙な場所を会場にし、チラシに向かいの公園にあるタコ型の遊具のイメージをあしらっているので、てっきりタコ関連の展覧会かと思ったくらいだ。どうせならタコとお化け煙突を合体させてほしかった。
2016/02/29(月)(村田真)