artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
ランドマーク・プロジェクトV──楢橋朝子
会期:2014/08/01~2014/11/03
関内周辺[神奈川県]
桜木町・ぴおシティの地下通路に展示しているのは写真家の楢橋朝子。ふだんはポスターなどを貼ってる壁に、近くを流れる大岡川の水面すれすれから撮った関内外の風景写真を滑り込ませている。これもよく見なければなにかの広告写真かと思って通りすぎちゃいそうだけど、よく見ると風景はすべて仰瞰だし、どれも画面が斜めってるし、下のほうに水面が迫ってるし、明らかに異質だ。この地下通路はおそらく海抜0メートルかそれ以下なので、津波が来たり大岡川が氾濫してこの地下通路に水が流れ込んだら、きっと水面がこの高さに見えるに違いない。
2014/08/14(木)(村田真)
美術の中のかたち 手で見る造形 横山裕一展「これがそれだがふれてみよ」
会期:2014/07/19~2014/11/09
兵庫県立美術館[兵庫県]
部屋の四方に、大きく出力された横山のドローイングと、そのコマにちなむ立体物や美術館の所蔵品を使ったインスタレーション。作品を触って鑑賞できる、兵庫県立美術館の名物企画だ。
ブーーンと、腰のあたりに響く複数台の扇風機の音が鳴り響く。壁はびっしりと作品で、余白はない。否応無しに空間に閉じ込められたと思ったら、横山の、ある向きへの強烈な方向感覚を強いてくる真っすぐな線の表現と、扇風機の風という物理的な力が作用して、私の体はまるでシューティングゲームの強制スクロールのように流れるままに、出口へと押し出された。とりあえず、作品に触っている暇はなかったけど……。
2014/08/14(木)(松永大地)
「アート・スコープ2012-2014」──旅の後(あと)もしくは痕(あと)
会期:2014/07/12~2014/10/13
原美術館[東京都]
ダイムラーがサポートする日本とドイツの作家交換プログラムの成果を発表するシリーズである。ベネディクト・バーテンハイマーの防護服を着用した人が日常風景に佇む映像と、今村遼佑のあまりにもささやかな日常への干渉の作品が印象に残る。
2014/08/13(水)(五十嵐太郎)
現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 セゲオ財団コレクションより
会期:2014/06/20~2014/08/24
東京国立近代美術館[東京都]
台湾のヤゲオ財団コレクションからセレクトした名品で構成したものだ。展示担当の保坂健二朗のギャラリートークを聞き、税金で購入する公立美術館ではできない個人コレクションだからこそできる実験だと理解すると、さらに面白い。また会場構成が興味深い。左右対称、水平と垂直の構成、鏡面/リフレクション、手前の部屋と奥の部屋の関係、絵の見えるシークエンスなど、注意深く練られている。会場には持ち主が家や職場でどう同じ作品を飾っているかも写真で紹介しており、それと比較すると、なお楽しめる。
2014/08/13(水)(五十嵐太郎)
ミッション[宇宙×芸術]──コスモロジーを超えて
会期:2014/06/07~2014/08/31
東京都現代美術館[東京都]
タイトル通り、宇宙開発/観測とアートが交差する内容だ。先月、改めて水族館の集客力に考えさせられたように、宇宙そのものがもつ魅力の大きさを痛感する。作家の構想するイメージやフィクションよりも、科学的に観測/考察/挑戦する現実が、圧倒的に凄いというか。もっとも、その中でも、名和晃平の作品は健闘していた。
2014/08/13(水)(五十嵐太郎)