artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
プレビュー:平成知新館オープン記念 京へのいざない
会期:2014/09/13~2014/11/16
京都国立博物館 平成知新館[京都府]
長年完成が待たれていた京都国立博物館の新しい平常展示館=平成知新館が、ついにオープン。そのこけら落としとして、同館所蔵の名品400点以上(うち、国宝50余点、重要文化財110余点)を1期・2期に分けて展示する。日本史や美術の教科書でお馴染みの《伝源頼朝像》や雪舟筆《天橋立図》、狩野永徳筆《洛中洛外図屏風》、如拙筆《瓢鮎図》などの名画をはじめ、絵画、書跡、彫刻、工芸、考古の名品が並び、さながらオールスター戦のごとき華やかさだ。谷口吉生が設計した建物とともに、この秋関西美術界で最注目のトピックとなるだろう。
2014/08/20(水)(小吹隆文)
プレビュー:Art trip vol.01 窓の外、恋の旅。──風景と表現
会期:2014/09/27~2014/11/30
芦屋市立美術博物館[兵庫県]
「風景」をテーマに、芦屋ゆかりの作家である小出楢重、吉原治良、村上三郎、ハナヤ勘兵衛、そして現在活躍中の下道基行、林勇気、ヤマガミユキヒロの作品を展覧。さらに、谷川俊太郎の詩を彼らの作品とともに展示する。絵画、写真、映像、詩をひとつの会場に並べることで、近代と現代の風景表現の変遷と差異、美術作品と詩の共鳴を味わいたい。
2014/08/20(水)(小吹隆文)
プレビュー:ただいま。カーネーションと現代美術
会期:2014/09/03~2014/09/10
岸和田市立自泉会館展示室[大阪府]
大阪府岸和田市やその周辺の出身・在住である6組のアーティスト(稲垣智子、大﨑のぶゆき、永井英男、西武アキラ、吉村萬壱、ワウドキュメント)が、岸和田市の歴史ある洋館でグループ展を開催する。出品作家はいずれも経験豊富なので、作品のクオリティーは心配ない。むしろ気になるのは、彼らの活動が「だんじり祭り」に代表される岸和田のパブリックイメージと、どこまで対抗できるかである。岸和田は歴史ある城下町であり、市街地には古い日本家屋や洋風建築が数多く残っているが、そうした文化的な一面は一般的にはほとんど浸透していない。今回の彼らの試みが、アートピープルが岸和田、ひいては泉州エリアを見直すきっかけになればいいと思う。
2014/08/20(水)(小吹隆文)
広島平和記念資料館
広島平和記念資料館[広島県]
家族で広島へ。2泊3日で世界遺産をふたつ(原爆ドームと厳島神社)見ちゃおうという魂胆だ。まずは昼飯にお好み焼きを食べて、さっそく原爆ドームへ。広島へは何度も来ているが、原爆ドームを間近に見るのはウディチコの「パブリック・プロジェクション」以来だから、15年ぶりのこと。69年前、このへんの上空で核爆発が起こり、一瞬にして何万人もの命が奪われた。そんなもんを発明した気分と、そんなもんを人の上に落とした気分はどれほど違うだろう、などと思いながら平和記念資料館へ。ここに入るのは、広島市現代美術館で宮島達男が「ヒロシマ・インスタレーション」を発表したとき以来だから、24年ぶり。なんか現代美術に導かれてぼくは原爆に接近してきたような。24年前に来たときは丹下健三設計の本館だけしかなかったはずだが、いまは東館から入って本館から退出するようになっている。東館では原爆投下までの歴史的背景が紹介され、本館では投下直後のパノラマや被爆した遺品などが展示されている。被爆展示のジレンマは、もっとも悲惨なはずの爆心地ではヒトもモノも跡形もなく消えてしまったので、展示するものがないことだろう。もっとも伝えたいことが伝えられないもどかしさ。だから原爆の恐ろしさは想像するしかないのだ。そこに原爆とアートの接点がある。
2014/08/19(火)(村田真)
清里フォトアートミュージアム開館20周年記念 原点を、永遠に。
会期:2014/08/09~2014/08/24
東京都写真美術館地下1階展示室[東京都]
山梨県清里に1995年に開館した清里フォトアートミュージアムは、今年で20周年を迎えた。それを記念して開催されたのが本展で、同ミュージアムの活動の柱の一つである「ヤング・ポートフォリオ」の収蔵作品から選抜した約500点を展示している。
「ヤング・ポートフォリオ」は35歳以下の若い写真家たちの作品を公募・購入するというユニークな企画である。複数の点数から成るシリーズ(ポートフォリオ)を、年齢制限に達するまで何度でも購入できるというこの企画は、日本だけでなく世界各国の写真家たちを勇気づけてきた。過去20年の応募総数は74カ国9,191人の106,224点に達しているという。そのうち実際に購入されたのは698人、5,296点であり、この数を見ただけでも、世界有数のコレクションに成長しつつあることがわかる。コレクション作家の中に、木村伊兵衛写真賞(本城直季、下薗詠子、百々新)土門拳賞(百瀬俊哉、亀山亮)などの受賞作家が含まれていることからも、その重要度が増していることが確認できるだろう。
今回の展示は、なるべく多くの写真家たちの作品を紹介するという意図で構成されているため、一つの傾向に焦点を結ぶのはむずかしかった。逆にこの20年の間に、写真表現がこれだけ多様な方向に伸び広がっていることに、あらためて驚きを覚えた。日本の写真家たちに限っても、モノクロームの正統的なドキュメンタリーから演出的なパフォーマンス・フォト、デジタル合成や画像の改変を多用した実験的な作品まで、めくるめくような幅の広さだ。むろん他の国の写真家たちの作品を見ても、表現のグロバーリズムが隅々にまで浸透していることが見て取れる。こうなると、ブラジル、ペルー、メキシコなど中南米の写真家たちの神話性、魔術性へのこだわりや、ポーランドやチェコなど東欧諸国の写真家たちの身体性を介した実存的な写真表現など、際立った磁場が成立している地域の写真群の方がむしろ興味深く思えてくる。日本の写真家たちも、そろそろ足下に目を向けていく時期にきているのかもしれない。
2014/08/19(火)(飯沢耕太郎)