artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

再燃焼展

会期:2014/08/26~2014/09/06

MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

家庭で不用になった量産陶磁器を回収し、古民家の解体素材を燃料にして窯で再焼成したものを、作品として展示している。昨年に続く2度目の展示だが、前回と異なるのは実用に耐えうる品が少なからず含まれる点だ。以前の作品は異形の美というか、再焼成により絵付けや本体に生じた予測不可能な変形を愛でる意味合いが強かった。要するにオブジェである。しかし今年の新作のなかには、一見の者が事前説明なしに見ても実用品と呼べるものが幾つかあった。このプロジェクトが目指すゴールがどこなのかは不明だが、技術的向上により選択肢が広がったことは歓迎すべきだ。

2014/08/28(木)(小吹隆文)

旅行記[前編] 佐藤貢 出版記念展

会期:2014/08/27~2014/09/07

iTohen[大阪府]

廃品や拾得物などを組み合わせて、詩情豊かなジャンク・オブジェをつくり上げる佐藤貢。彼の場合、作品もさることながら、その生き方自体も魅力的である。20代のアジア放浪から、帰国後の和歌山移住、そして現在の在住地である名古屋まで、佐藤の行動は常に捨て身の直感に従っており、その都度の出会いを肥やしにして作品世界を成長させてきた。まるで彼自身が強力な磁場であるかのように、人と素材と場が引き寄せられていくのである。そんな佐藤が、アジアでの放浪旅行の前半部を綴った自伝『旅行記』を出版し、その記念として個展を開催した。作品はオブジェが中心で、ドローイングと平面作品が少々。作風に大きな変化はないが、廃品のガラス瓶(液体入り)の多用が目立っている。自伝出版を機に、彼への理解が劇的に深まる可能性がある。後編の出版と次の個展が待ち遠しい。

2014/08/27(水)(小吹隆文)

Unknown Nature

会期:2014/08/22~2014/09/03

AYUMI GALLERY/ Underground/ 早稲田スコットホールギャラリー[東京都]

カトウチカのキュレーションで、Unknown Seriesとして毎年開催されてきたグループ展も、今年で第5回目を迎える。今回は神楽坂、早稲田の3つのギャラリーを舞台として、「Unknown Nature」展が開催された。出品作家はAYUMI GALLERYの「Recombination 組み換え」のパートに小山穂太郎、鷹野隆大、大西伸明、進藤環、岡田和枝、西原尚、Undergroundの「Creature イキモノ」のパートに松本力、秦雅則、町野三佐紀、栗山斉、渡辺望、青木真莉子、渡邉ひろ子、早稲田スコットホールギャラリーの「Myth 神話」のパートに豊嶋康子、船木美佳、原游、小島章義、小泉圭理である。
「大きく変わりつつある「自然」の姿、その概念、私達との関係に目を向ける」という展覧会のコンセプトがやや抽象的で曖昧であり、三つのパートの相互関係もうまく絡み合っているようには思えない。出品作品も、絵画、写真、インスタレーション、映像、サウンド等、かなり幅が広い。だが逆に、いま日本の現代美術のコアの部分がどのようにうごめいているかという断面図が、くっきりとあらわれてきているのが興味深かった。写真作品を出品しているのは、鷹野、進藤、秦、青木の4人だが、それらはまったく他の作品と違和感なく、展示空間に溶け込んでいる。1990年代以降、写真と現代美術の境界線の消失がずっと指摘されてきたのだが、はからずも、それがむしろ「普通」の状態になっていることが証明されているともいえる。今後は青木真莉子の写真、インスタレーション、映像の融合の試みのように、各ジャンルの混淆を前提として作品のクオリティが問い直されてくるのではないだろうか。

2014/08/25(月)(飯沢耕太郎)

谷本研、中村裕太 「タイルとホコラとツーリズム」

会期:2014/08/14~2014/08/24

Gallery PARC[京都府]

夏の京都の地蔵盆。33のホコラの写真とタイルが吊るされた竹で組んだ盆棚のインスタレーションと畳のスペースで、ギャラリーはまるで縁日のよう。ホコラとはお地蔵さんが収まっている小さな社のことで、写真は小さなホコラ風に額装されていた。タイル張りのホコラを見たのがこの展覧会のきっかけだったそう。結果的に季節感が取り入れられたのだと思うが、この清々しさは居心地が良い。
京都市内のフィールドワークがベースになっていて、作家の視線の先にあるものに対して、見る側も全く知らないものや場所ではない、ある程度の共通項をもってそれを、作品を、見たり、対峙できたり、というところが、路上にあるものの面白さだと思う(作品を前に他愛のない世間話もできる)。町にはほんとうにいろんなものが潜んでいるなあ。
最終日、時間最後まで粘ってしまったこともあり、撤収を勝手にお手伝いさせてもらったことが、さらに町内の地蔵盆に参加したかのような体験として印象に残った。

2014/08/24(日)(松永大地)

ゴー・ビトゥイーンズ こどもを通して見る世界

会期:2014/05/31~2014/08/31

森美術館[東京都]

展示の位置が少し低く、夏休みだから子供向けの企画と思いきや、内容は決してそうでもなく、むしろ子供をテーマにした美術展だった。社会派、政治的な作品もあり、ナッファール&サッロームのパレスチナの子供の現状とその夢をテーマにした映像「さあ、月へ」が良かった。





会場風景

2014/08/23(土)(五十嵐太郎)