artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
パラダイス・ガーデン
会期:2014/04/11~2014/05/04
MA2ギャラリー[東京都]
岩崎貴宏、飯田竜太、榮水亜樹の3人展。岩崎は窓際に髪の毛で高さ10センチほどの塔を建てたり、岡本太郎の文庫本『美の呪力』のスピン(ページに挟むひも)をほぐしてクレーン状にしたり、素材もサイズも場所の選択も絶妙だ。2階には水に映った平等院みたいな上下対称の木の模型が吊るされてるが、その下の床にシャープペンシルの芯でこしらえた電信柱みたいなもののほうが目立たないけどインパクトがある。
2014/05/04(日)(村田真)
隣人 イスラエル現代写真展
会期:2014/05/03~2014/06/15
東京アートミュージアム[東京都]
おそらく日本でははじめての「イスラエル現代写真展」だろう。自身がインスタレーション作家でもあるレヴィヴァ・レゲヴのキュレーションにより、東京・仙川の東京アートミュージアムで20人のアーティスト、写真家の作品の展示が実現した。各作家の出品点数が1~3点とやや少なく、もう少しそれぞれの作品世界がよくわかるような構成にしてほしかったし、解説もややわかりにくかった。それでも、とても興味深い内容の展覧会であったことは間違いない。
いうまでもなく、イスラエル人にとっての「隣人」とは、パレスチナ、アラブの人たちである。だがいうまでもなく、両者は「しばしば相反する歴史的文脈、イデオロギーの切望、そして国家的野望を負って」きた。その「隣人」同士の、複雑で微妙な関係をテーマにした作品を集成したのが、今回の展覧会である。当然、歴史的、政治的文脈を強く意識した表現が頻出する。ミハ・ウルマンの1972年のパフォーマンスの記録「Messer-Metzer: Exchange of Earth」では、アラブの村、Messerとイスラエル側のキブツ、Metzerに掘った穴の土を交換する。フォト・ジャーナリズムとアートの両方の分野にまたがって活動するパヴェル・ヴォルベルグの「Dir-Kadis」(2004年)では、目隠しされて後ろ手に縛られたアラブ人の男性、イスラエル軍の戦車、白ヤギたちが三位一体の構図をとる。周辺諸国との極度の緊張関係の中で生活し、制作しなければならないイスラエル人アーティストたちが、政治的にならざるを得ない状況がよくわかる。
もう一つはキュレーションを担当したレヴィヴァ・レゲブやライダ・アドン、タル・ショハット、アニサ・アシカルなどの女性アーティストの作品に典型的にあらわれているように、身体性と演劇性を強調する仕事が目につくことだ。自己と他者との境界線を常に意識する中で、身体を介して現実世界の感触を確かめようという強い欲求が、彼女たちの中に芽生えつつあるということではないだろうか。いずれにせよ、歴史・政治意識が極めて希薄な日本の写真家たちの仕事の対極というべき「イスラエル現代写真」が、はじめてきちんとした形で紹介されたことの意義は大きい。
2014/05/03(土)(飯沢耕太郎)
羽鳥玲個展「Blue Beard」
会期:2014/04/30~2014/05/11
black bird white bird[京都府]
シンプルでどっしりとしたタッチで、「唇」とか「銃」とか「靴」とか、ずばりそのものだけを描く単純なドローイング。展示している作品数も多いわけではない。言ってしまえば、情報量はとても少ないのだけど、それがなんとも魅力的。水彩の黒一色なのがいいのかも。見る側は見る側で、各自でその対象に迫って想像して見ているということなのだと思う。
2014/05/03(土)(松永大地)
詩集「檸檬のピーチ」出版記念イベント
会期:2014/05/03
京都五条モール内 8(おっと)[京都府]
詩人で、リーディンググループ「ななつきぐも」で朗読会などを行なう小鳩ケンタの自費出版レーベル「コバトレーベル」から初めてリリースされたのは、詩集『檸檬のピーチ』。その出版イベントとして、小鳩、その本の編集担当のうめのたかし(homehome)、挿絵を寄せているasaruの3人によるトークショーなどが行なわれた。
僕は、イベントには参加できず、asaruの原画展示を拝見しただけなのだが、彼女(asaruさんは女性)の絵はイラストレーションとしても美しいのだけど、シンプルな模様や線だけという作品も多い。なにが描かれているのか観察してみると、一瞬一瞬の動きを丁寧に切り取って記録するような、身体やその記号の記録が描かれていることがわかる。人物のモーションを一場面ごとに標本としているよう。そこに力強い線とかたちが、まるでマンガに描かれる方向を示すような補助線としても自然と機能しているようにも見える。
会場はお茶屋を改装した場所の一室。ドローイングをところ狭しと壁一杯にたくさんランダムに貼られた空間は一日だけというのがとても残念。ちなみに、詩集は意表をついてくる言葉の淡々としたリズムが心地いい。ブックデザインは大阪のSKKYによるもの。
2014/05/03(土)(松永大地)
中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス 藤本壮介《Toilet in Nature》
会期:2014/03/21~2014/05/11
千葉県飯給駅[千葉県]
建築では、藤本壮介の《Toilet in Nature》が強烈だった。なにしろ、隣接する飯給駅の駅舎やホームよりも、トイレの方がデカい。それどころか、車両よりも大きい面積だ。既存の樹木を囲む、大きなリングの中に、ぽつんと透明なボックスに入ったトイレをひとつ置く。まさに自然の中のトイレである。彼らしいユーモアを感じるデザインだ。
2014/05/02(金)(五十嵐太郎)