artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
MONSTER Exhibition 2015
会期:2015/06/04~2015/06/08
渋谷ヒカリエ 8/COURT[東京都]
渋谷ヒカリエの8階にて、MONSTER exhibition2015が開催された。被災地の仙台で企画された怪獣をテーマにした公募であり、デザインやアートが同居する異種格闘技の雰囲気は、以前審査を担当したキリン・アートアワードを思い出す。今回は造形としてのデザインよりも、精神的な脅威としての怪獣性に注目し、児玉龍太郎の13分の不穏な短編映画『小僧枯』が気になった。本展はニューヨークに巡回する予定だが、『ゴジラ』や『チャッピー』など、日本リスペクトの映画が海外で次々と発表されるなか、本家の怪獣に対する創造力を見せてほしい。
2015/06/03(水)(五十嵐太郎)
伊東豊雄 展「ライフスタイルを変えよう──大三島を日本で一番住みたい島にするために」
会期:2015/06/04~2015/08/22
LIXILギャラリー[東京都]
瀬戸内海に浮かぶ人口約6,500人の大三島。2011年に「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」がオープンしたことをきっかけに、伊東建築塾の塾生たちが島を定期的に訪れるようになり、島の人々との交流が始まった。そうしたなかで、伊東氏と塾生たちが2015年から10年計画で「大三島を日本で一番住みたい島にするために」というスローガンのもとで「独自の島づくり」に取り組むことになった。この展覧会はそのプロジェクトの課題とモデルとを提示する構成。訪れる人びとを不思議に魅了するという大三島はこれまで大きな開発はほとんどなされていない。そうした島において、地域に暮らす人々、Iターンなどの移住者、外国人が多いというサイクリストなどが互いに交流できるような場をつくり、新しい食材や商品を開発し、島の魅力を訴えると同時に住みやすい、暮らしやすい環境をつくっていくことを目指しているという。伊東豊雄氏に話を伺ってとても興味深く感じたのは、このプロジェクトが自治体や大資本の依頼によるものではなく、伊東氏や塾生たちが地元の人々と交流するなかで自然に醸成されてきたことである。年度毎の予算の縛りのなかで与えられた課題を解決するのではなく、明確な着地点が設定されている訳でもなく、終わりのない日常の営みのなかに新しいライフスタイルを提案してゆくのだ。その取り組みによって地域の良さがどのように引き出され、発信されてゆくのか、プロジェクトの行方に注目したい。[新川徳彦]
2015/06/03(水)(SYNK)
金沢の町家──活きている家作職人の技
会期:2015/06/04~2015/08/22
LIXILギャラリー[東京都]
戦災や震災に遭うことなかった城下町・金沢には、いまでも古い町家──住まいと生業が共存する都市住宅──が数多く見られる。そうした町家が保存され、手入れされ、使い続けられるためには、伝統的な家作技術を持った職人たちが存在し、その技術が受けつがれていかなければならない。金沢はこのような町家や歴史的資産があることで、伝統的技術への需要があり、そうしたなかで職人が育成され、技術が受け継がれているという。展覧会では、町家の家作に必要な技術から7種類の技──大工・石工・瓦・左官・畳・建具・表具──の職人たちに焦点をあてて、道具、材料の展示と、職人へのインタビューやパネル展示によって技術とその継承のありかたを紹介している。全国的に伝統的技術の後継者は減っている。技術への需要が減っていることはもちろんだが、かつての徒弟制が成立しなくなり技術を継承するシステムが崩れてしまっていることも理由だ。そうした状況で金沢で行なわれている取り組みのひとつが1996年に職人の組合によって設立された「金沢職人大学校」である。ここでは基本的な技能を習得した職人を対象に、伝統的な職人文化を学ぶと同時に、熟練技能者である講師からより高度な技術が教授されるほか、武家屋敷の修復など実践的な仕事の機会を生み出しており、展示ではその活動についても触れられている。職人たちへのインタビューを読むと、技術の伝承ばかりではなく、道具や原材料の確保が困難になってきていることも喫緊の課題で、伝統的技術の継承のありかたが示されていると同時に、それらをとりまく環境の厳しさも伝わってくる。[新川徳彦]
2015/06/03(水)(SYNK)
「線を聴く」展
会期:2015/04/24~2015/07/05
メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]
メゾンエルメスの「線を聴く」展へ。森美術館の「シンプルなかたち」展と呼応する企画である。富士山の等高線の部分をひたすら切り取って、本当に線だけを並べる髙田安規子・政子の作品は凄まじい手作業に支えられているが、ロジェ・カイヨワによる石コレクションの素晴らしさを見ると、自然がつくる造形のすごみに感心する。建築からは、アトリエ・ワンが大きなバージョンのマンガ・ポッドを出品していた。
2015/05/27(水)(五十嵐太郎)
シンプルなかたち展:美はどこからくるのか
会期:2015/04/25~2015/07/05
森美術館[東京都]
森美術館の「シンプルなかたち」展へ。ICCと同様、理系的なアートが多く、楽しいが、古今東西いろんなものがあって、やや拡散しすぎかもしれない。おそらく企画者の関係で、フランスから借りたものが多い。個人的に大巻伸嗣の作品がベストだった。空気の力でふわふわと軽やかに浮かぶインスタレーションは、背後に東京の風景が重なり美しい。
2015/05/24(日)(五十嵐太郎)