artscapeレビュー

金沢の町家──活きている家作職人の技

2015年07月01日号

会期:2015/06/04~2015/08/22

LIXILギャラリー[東京都]

戦災や震災に遭うことなかった城下町・金沢には、いまでも古い町家──住まいと生業が共存する都市住宅──が数多く見られる。そうした町家が保存され、手入れされ、使い続けられるためには、伝統的な家作技術を持った職人たちが存在し、その技術が受けつがれていかなければならない。金沢はこのような町家や歴史的資産があることで、伝統的技術への需要があり、そうしたなかで職人が育成され、技術が受け継がれているという。展覧会では、町家の家作に必要な技術から7種類の技──大工・石工・瓦・左官・畳・建具・表具──の職人たちに焦点をあてて、道具、材料の展示と、職人へのインタビューやパネル展示によって技術とその継承のありかたを紹介している。全国的に伝統的技術の後継者は減っている。技術への需要が減っていることはもちろんだが、かつての徒弟制が成立しなくなり技術を継承するシステムが崩れてしまっていることも理由だ。そうした状況で金沢で行なわれている取り組みのひとつが1996年に職人の組合によって設立された「金沢職人大学校」である。ここでは基本的な技能を習得した職人を対象に、伝統的な職人文化を学ぶと同時に、熟練技能者である講師からより高度な技術が教授されるほか、武家屋敷の修復など実践的な仕事の機会を生み出しており、展示ではその活動についても触れられている。職人たちへのインタビューを読むと、技術の伝承ばかりではなく、道具や原材料の確保が困難になってきていることも喫緊の課題で、伝統的技術の継承のありかたが示されていると同時に、それらをとりまく環境の厳しさも伝わってくる。[新川徳彦]

2015/06/03(水)(SYNK)

artscapeレビュー /relation/e_00031052.json l 10112319

2015年07月01日号の
artscapeレビュー