artscapeレビュー
伊東豊雄 展「ライフスタイルを変えよう──大三島を日本で一番住みたい島にするために」
2015年07月01日号
会期:2015/06/04~2015/08/22
LIXILギャラリー[東京都]
瀬戸内海に浮かぶ人口約6,500人の大三島。2011年に「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」がオープンしたことをきっかけに、伊東建築塾の塾生たちが島を定期的に訪れるようになり、島の人々との交流が始まった。そうしたなかで、伊東氏と塾生たちが2015年から10年計画で「大三島を日本で一番住みたい島にするために」というスローガンのもとで「独自の島づくり」に取り組むことになった。この展覧会はそのプロジェクトの課題とモデルとを提示する構成。訪れる人びとを不思議に魅了するという大三島はこれまで大きな開発はほとんどなされていない。そうした島において、地域に暮らす人々、Iターンなどの移住者、外国人が多いというサイクリストなどが互いに交流できるような場をつくり、新しい食材や商品を開発し、島の魅力を訴えると同時に住みやすい、暮らしやすい環境をつくっていくことを目指しているという。伊東豊雄氏に話を伺ってとても興味深く感じたのは、このプロジェクトが自治体や大資本の依頼によるものではなく、伊東氏や塾生たちが地元の人々と交流するなかで自然に醸成されてきたことである。年度毎の予算の縛りのなかで与えられた課題を解決するのではなく、明確な着地点が設定されている訳でもなく、終わりのない日常の営みのなかに新しいライフスタイルを提案してゆくのだ。その取り組みによって地域の良さがどのように引き出され、発信されてゆくのか、プロジェクトの行方に注目したい。[新川徳彦]
2015/06/03(水)(SYNK)