artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

千家十職×みんぱく

会期:2009/03/12~2009/06/02

国立民族学博物館[大阪府]

千家十職とは、茶事全般の道具(茶碗、窯、表具、指物など)を作って来た十の家のこと。300年から400年を超える歴史を持ち、当代で11代から17代を数える。本展では、彼ら十職が作り出してきた名品の展示に始まり、十職の目で選ばれたみんぱく(国立民族学博物館)収蔵品と、収蔵品にインスパイアされた十職の新作との共演、みんぱく側が十職の仕事を10の動詞に当てはめ、その分類に応じてセレクトした収蔵品展示が行なわれた。アルチザンとアカデミズムのコラボレーションとでもいうべき異色企画だが、収蔵品に新たな価値を与える手法としてとても斬新だ。

2009/03/12(木)(小吹隆文)

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吉原治良賞記念アートプロジェクト contact Gonzo:「the modern house──或は灰色の風を無言で歩む幾人か」project MINIMA MORALIA section 1/3

会期:2009/02/11~2009/02/20

大阪府立現代美術センター[大阪府]

どつき合いの喧嘩がそのままダンスになるcontact Gonzoのパフォーマンス。3年前に彼らを知った時の驚きは今も鮮明だが、同時に一発屋の懸念も抱いていた。久々に彼らのパフォーマンスと活動記録を見て、その表現には大きな可能性があることを改めて実感した次第。彼らの今回の活動は、刷新され約3年もの月日をかけて展開された「吉原治良賞記念アートプロジェクト」によるもの。同賞の主旨はさておき、3年間にわたって観客の注目を維持し続けるのは、やはり不可能と言わざるを得ない。私も途中で脱落したため、プロジェクトの全体像は把握できていない。この点は次回以降見直しが必要だと感じた。

2009/02/14(土)(小吹隆文)

「『WA:現代日本のデザインと 調和の精神』パリ展公開報告会──日本のデザイン文化を海外で紹介すること」開催

会期:2009/02/25

国際交流基金[東京]

「メゾン・エ・オブジェ」の紹介のなかでも触れたが、2008年10月22日から2009年1月31日までパリ日本文化会館で、現代のプロダクトデザインをテーマにした「WA:現代日本のデザインと調和の精神」展が開催された。この展覧会は今後国際巡回する予定であるが、パリ展を終えて国内の関係者、一般の方々に向けて報告会が開かれる。展覧会の内容を映像を交えて報告した後、展覧会のキュレーション、グラフィックデザイン、展示デザイン、照明デザインそれぞれに関わったメンバーがそれぞれの視点でディスカッションを行なう(メンバーの詳細はhttp://www.jpf.go.jp/j/culture/new/0809/09-02.htmlに掲載されている)。

 参加希望者は、2月23日(月)までに下記メールもしくは、FAXにて国際交流基金のデザイン展報告会係までご連絡をということである。
国際交流基金・デザイン展報告会係=E-mail:Noriko_Morimura@jpf.go.jp /Fax:03-5369-6038[森村]

●パリ展公開報告会──日本のデザイン文化を海外で紹介すること
日時=2月25日(水)、14:30~16:30
会場=国際交流基金 JFICホール「さくら」 東京都新宿区四谷4-4-1
*参加無料、定員100名、日本語
*定員になり次第締切

 また、本展展示デザイナー「TONERICO」がNHK「トップランナー」に出演する[放送日=2月23日(月)、24:10~]。番組のなかで本展の展示デザインも紹介される。

「WA:現代日本のデザインと調和 の精神」展:http://www.jpf.go.jp/j/culture/new/0809/09-02.html

写真:イベントチラシ[デザイン=松下デザイン室]

2009/01/30

バウハウス90周年〈1〉──バウハウス・デッサウ展

会期:2009年1月25日~2009年3月29日

宇都宮美術館[栃木]

バウハウス・デッサウ展は、昨年4月に東京藝術大学大学美術館で立ち上がり、二カ所の巡回を経て、いよいよ1月24日より宇都宮美術館で開催される。デッサウのバウハウス校舎は世界遺産に指定されるなどモダンデザインの歴史的記念碑としての地歩を一層高めている観がある。その意味では、バウハウス・デッサウのコレクションを中心にしたこの展覧会は、モダンデザインのルーツに触れる好機であることに疑問の余地はない。

 他方、90年経ったからこそ、バウハウスを絶賛する態度から一歩距離を引いてみる見方があってもいいのではないかと思う。レジェンドは、ある意味、単純であるがゆえに訴求力を持ちうるのかもしれないが、「第一次世界大戦敗戦直後の瓦礫から立ち上がり、モダンデザインの基礎を築いたものの、1933年にナチスに閉鎖されました」という一連のクリシェからそろそろ脱してもいい時期ではないかと思う。実際、閉校後、バウハウスの関係者のなかには第三帝国下で有用なデザイナーとして活躍した者も少なくない。第三帝国の文化との断続と連続、あるいは、バウハウスに先立つ、アーツ&クラフツ運動との断絶面と連続面を検証していくという新たな視点での「バウハウス」の再考や再解釈ができる時点に来ているのではないか(すでに紹介したが、東京都美術館で同日にオープンする「生活と芸術──アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」と併せて見るという見方をぜひお勧めしたい。特に、同展で展示されているペーター・ベーレンスのヤカンをじっと見ていただきたい。そこにモダンデザインの連続と断絶が見えてくる)。

 事象を単純化して礼拝の対象として見せることも展覧会の技であるが、クリシェ化したヴィジョンを解体して新たな光を当てることができるのも展覧会の醍醐味である。そういう切り取り方は、たとえば、現代のアート&メディア&テクノロジーの最先端の状況と重ね合わせて、バウハウスの理念の到達点と限界点を検証することによっても可能だろう……。バウハウス100年となる2019年、必ずやバウハウスの展覧会が開催されるだろうが、そのときこそバウハウスを新たな光の下に照らし出すような展覧会が現われんことを祈ってやまない。

 なお、今年はバウハウス90周年の記念すべき年であるので、このコーナーで関連するイベントや展覧会などを取り上げていきたい。今回はその第一回目にしたいと思う。

画像:バウハウス・デッサウ展(宇都宮美術館)の展覧会カタログ[筆者撮影]

2009/01/23

パリで国際デザイン見本市「メゾン・エ・オプジェ」開催(1/23~1/27)

メゾン・エ・オブジェは、1995年より年に2回(1月と9月)パリで開催されるインテリア・デザインの国際見本市である。今年で14年目を迎える。ミラノ・サローネと比べると歴史的には若いデザイン見本市であるが、出展社数は約3,000を数え、フランスだけでなく世界各国から多数の来場者を誇る。規模的にはヨーロッパでも最大規模のデザイン・イベントに成長している。ジェトロもジャパンブースを設置。天童木工など日本の企業も参加している。

 昨秋来、パリでは日本のデザインに関する展示が相次いで開催されており(「民芸の精神」展[ケ・ブランリー美術館、2008年9月30日~2009年1月11日]、「WA:現代日本のデザインと調和の精神」展[パリ日本文化会館、2008年10月22日~2009年1月31日]、「感性 kansei-Japan Design Exhibition-」[国立装飾美術館、2008年12月12日~21日]、「Japan Car」展科学産業博物館、パリ:2008年11月1日~9日]など)、日本のデザインに対する関心は、例年に増して高まっていると思われる。「WA:現代日本のデザインと調和の精神」は、「メゾン・エ・オプジェ」会期中も開催中[1/31まで]なので、世界各国から訪れるデザイン関係者とデザインファンが、日本デザインの現在の活況を知るいいチャンスになるだろう。

画像:「メゾン・エ・オブジェ 2009年」公式パンフレット[筆者撮影]

2009/01/22