artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
代替の発想
いよいよ歴史上初の黒人のアメリカ大統領(第44代)、バラク・オバマが正式に就任する。
オバマ氏は、選挙中、「Change」をメッセージに掲げ、その言葉は世界的な流行語となった。氏の就任は、今後さまざまな領域で進む「Change」を象徴する出来事であるのかもしれない。ところで、今冬、東京では、赤坂サカスに2/15までの期間限定でスケート場「The Rink at 赤坂サカス」が開設され、としまえんにもアイスリンクがオープンするなどスケート場ブームになっている。なかでも、日比谷にオープンした多目的広場「日比谷パティオ」で期間限定(12/5~1/4)で設けられたスケートリンクは、プラスチックパネルにワックスを塗った人工のリンクであり、注目された。普通のスケート靴で滑ることができる。本物の氷との微妙な質感の違いはあるものの、普通に滑走を楽しむことのできるリンクであった。転んでも冷たくない。冷却装置が不必要なこのリンクは、冷却に不可欠な電力消費も少なく、環境にも優しいリンクである。氷がプラスチックにChangeしたのである。技術の進歩により、こうした代替がさまざまな領域で起こる予感がある。たとえば、今年、F1カーも新レギュレーションの下で大幅に姿を変える。また、三菱自動車から本格的な電気自動車iMievも発売される。21世紀の最初の十年を経て、眼に見えるかたちで私たちの生活環境にChangeが生まれてきている。こうしたChangeは、さまざまなモノやサービスのデザインにも影響を及ぼすはずである。
・The
Rink at 赤坂サカス
・日比谷パティオ
・三菱自動車
iMiev
2008/12/31(水)
フランスで、ル・モンド紙『デザイン 999のプロダクト』(20巻)を連続刊行
昨年秋10月半ば頃、パリの街並にある屋外広告としてル・モンド紙が「デザイン 999の名品」を出版するという告知が大々的に展開された。内容は、過去200年に渡って作られた重要なプロダクトの中から999点を選んでまとめたものである。この出版は、近年、日本を含めて各国で見られる「デザイン・ブーム」がフランスにも到来していることを示している。ちょうどパリにいた筆者は、創刊号(10月24日)を求めて書店とキオスクを歩き回りやっと見つけた。ほとんど完売状態であった。フランスでは、創刊号以降、毎週、最後の20巻(2月27日)まで連続して刊行される(下記URL参照)。現在、12巻まで刊行されている。この出版物は、刊行のたびに現地の書店で求めることもできるが、ネットでまとめて購入することもできる。実は、この出版には元となる本がある。イギリスのPhaidon社が2006年に出版した『Phaidon Design Classics』(全3巻)である。プロダクトの百科全書といった内容で、大判の図版とともに魅力的で適切な解説が付いている。この出版を日本語化しようという出版社が出てくることを祈らずにはいられない。
・Le
Monde du Design 999 objet cultes
・Phaidon
Design Classics
2008/12/31(水)
吉岡徳仁ディレクション「セカンド・ネイチャー」展
会期:10月17日~1月18日
21_21 DESIGN SIGHT[東京都]
デザイナーの吉岡徳仁によってディレクションされた企画展。全体的に白く透明感のある空間に仕立て上げたいようで、その無邪気な白さが妙に気恥ずかしい。天井から無数のビニールコードを吊り下げた《CLOUDS》は、素材は異なるものの、大巻伸嗣の《Liminal Air》とそっくりだったが、大巻に比べて圧倒的にボリュームに欠けており、その密度の薄さが貧乏臭い。
2008/12/14(日)(福住廉)
氾濫するイメージ──反芸術以後の印刷メディアと美術 1960’sー1970’s
会期:11月5日~1月25日
うらわ美術館[埼玉県]
60年代から70年代の印刷メディアにおける視覚的なイメージを紹介する展覧会。赤瀬川原平、木村恒久、中村宏、つげ義春、タイガー立石、宇野亜喜良、粟津潔、横尾忠則による作品、じつに500点あまりが展示された。政治的・社会的なメッセージが原色によって織り込まれたポスターや表紙、挿絵、絵画、コラージュ写真、漫画などを見ていくと、時代の匂いにむせ返ると同時に、印刷メディア自体が困難を迎えている今となっては、その時代への羨望の念を抱かずにいられない。これからの時代はほんとうに貧しくなってゆくばかりで、気が滅入る。
2008/12/12(金)(福住廉)
touch droog
会期:12月6日~12月28日
PANTALOON[大阪府]
85個の裸電球からなるシャンデリアや、大量の古着を縛って造形したソファーなどで知られるオランダのdroog designを紹介。既製品のアレンジと廃材のリサイクルに特徴がある彼らの仕事は、それ自体がデザイン批評とも言える。合理的でありながら、思わずニンマリするユーモアとウイットに富んでいるのも素晴らしい。また、特定のデザイナー集団ではなく、企業であり、運動体であり、デザイン言語でもあるという彼らの在り方自体にも興味をそそられた。
2008/12/07(日)(小吹隆文)