artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

感じる箱 展 grafの考えるグラフィックデザインの実験と検証

会期:2010/01/19~2010/03/13

dddギャラリー[大阪府]

大阪を拠点にさまざまな分野のデザインを手掛けているgrafによる展覧会。テーマは「感じる箱」。箱という立体性と空間性をともなうモチーフを駆使して、グラフィック表現の新たな可能性を問いかけるのだ。彼らは自身のスペースが大阪・中之島にあるため、地元の他所のスペースで発表を行なう機会は珍しい。それだけに、ここの作品だけでなく空間全体でどのようなプレゼンを行なうのかが気になる。

2009/12/31(木)(小吹隆文)

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ヴェルナー・パントン展

会期:2009/10/17~2009/12/27

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

文句なしに楽しめる。そしてパントンのことをいかに自分が知らなかったのか、ちょっと反省。アルネ・ヤコブセンの事務所から独立して以後、《パントン・チェア》を経て、家具と建築の境界を越えていくような多様な展開をするヴェルナー・パントンの軌跡を知ることができる。途中、靴を脱いで通り抜けるスペースもあり、すっかりパントンの世界に浸ってしまった。《ファンタジー・ランドスケープ》という伝説のインテリアは、パントンのデザインで埋め尽くされた洞窟のような空間。色の効果も幻想的。さらに立体的な椅子である《リビング・タワー》、カーペットが一部立体化して椅子となっている《3-Dカーペット(ウェーブ)》など、こんなことまでやっていたのかという驚きを楽しめる。

展覧会URL:http://www.operacity.jp/ag/exh111/

2009/10/18(日)(松田達)

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複々製に進路をとれ 粟津潔60年の軌跡

会期:1月24日~3月29日

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

2009年、丁度80歳になるグラフィックデザインの鬼才、粟津潔(1929~)の60年間にわたる芸術活動を振り返る展覧会が開催される。粟津潔は、戦後日本のグラフィックデザインの革新者のひとりであるが、映像、写真、環境デザイン、ペインティングそして執筆という活動の多面性という点で、戦後日本の代表的デザイナーのなかで頭抜けている。粟津潔に関しては、近年、金沢21世紀美術館で「荒野のグラフィズム:粟津潔展」[2007年11月23日~2008年3月20日]が開催されたばかりだが、金沢展が、絵画や素描などを含めて粟津のグラフィックの仕事を中心において展示していたのに対して、川崎での展示は、粟津の仕事の多面性により力点を置いて時代の推移とともに変貌していった活動を総合的に紹介する。

展覧会タイトルの「複々製に進路をとれ」は、一万円札の複製を展示して物議を醸した赤瀬川原平の言葉である。戦後60年代から70年代にかけてわが国を覆った、複製と複製の複製が現実を埋め尽くす新たな社会状況での芸術的な戦略を指し示す言葉である。ヴァルター・ベンヤミンのいう複製技術時代の次に到来した新たな複製メディア状況を象徴する言葉であった。粟津は、デザイナーとしてかかる状況を引き受け、そして駆け抜けることで独自のデザインワークを進めて行ったと言える。そのダイナミズムを確かめる展覧会となるだろう。

展覧会詳細
http://www.kawasaki-museum.jp/display/exhibition/exhibition1.html#awazu

 

2009/1/14(水)

真壁智治 チームカワイイ『カワイイパラダイムデザイン研究』

発行所:平凡社

発行日:2009年9月

数年前から真壁智治が、研究室の学生によって結成されたチームカワイイとともに、カワイイをテーマに現代のデザインを調査した成果が一冊の本として発表された。軽そうなトピックに思われるかもしれないが、400ページに及ぶ大著である。真壁によるコンセプトの論文、デザインの事例紹介、現代建築の検証など、二回のシンポジウムやリサーチをすべてつぎ込んだ総力戦だ。なるほど、かわいいという感性が重視されているのは間違いない。今後カワイイについての考察を深めていくうえでの基礎資料集成といったおもむきである。筆者も、本書に「かわいい建築論をめぐって考えておくべきこと」というテキストを寄稿した。

2009/09/30(水)(五十嵐太郎)

神戸ビエンナーレ2009

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパーク、神戸港会場、兵庫県立美術館、三宮・元町商店街[兵庫県]

2007年に第1回が開催された神戸ビエンナーレ。その売りは、貨物コンテナを大量に持ち込んで展示会場に流用するという、港町・神戸を意識したプランだった。しかし、引きが取れず照明設備が劣るコンテナでは、インスタレーションや映像ならともかく、絵画や立体をまともに見ることは難しい。そうした設備面での悪条件と、さまざまなレベルの作品が混在した配置もあって、多くの課題を残す結果となった。今秋の第2回では、招待作家を兵庫県立美術館に集中させ、主会場のメリケンパークと連絡船で結ぶ方式を採用。さらに海上でも作品展示を行ない、スケールとグレードの向上を図っている。メリケンパーク会場で昨年同様コンテナが用いられるのは、筆者としては残念。しかし、兵庫県立美術館と海上で質の高い展示が行なわれるなら、前回以上の成果が期待できる。また、街中の三宮・元町商店街と美大生・専門学生による共同企画も予定されており、地元との密着が強く意識されている点にも好感が持てる。主催者の構想が額面通りに機能して、見応えのある催しになることを期待する。

2009/09/20(日)(小吹隆文)