artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

LIVING CULTURE─LIXILギャラリーのグラフィック 35年の視点

会期:2016/10/29~2016/11/24

LIXILギャラリー[東京都]

1981年に伊奈ギャラリーとしてオープン(のちにINAXギャラリーに改称)したLIXILギャラリーは、今年開設35周年を迎えた。35年間にギャラリーでは建築やデザイン、現代美術、やきもの作品を紹介する展覧会が開催されてきた。本展は同ギャラリーのこれまでの活動を振り返るもので、ポスター、リーフレット、案内はがき、ブックレットなどのグラフィック約300点が展示された。
1982年から1995年まで、同ギャラリーでは美術評論家、中原佑介が監修者となって多彩な作家による現代美術およびデザインの展覧会が企画された。今回展示されているパンフレット、ニューズレターには、いま活躍している多くのアーティストたちの若かりし頃の姿が掲載されていて、その確かな目に驚かされる。筆者がよく足を運ぶのは現在は大阪と東京で開催されている「建築とデザインとその周辺をめぐる巡回企画展」。美術館や博物館ではなかなか見ることができない独自の視点によって設定されたテーマによる展覧会が年4本開かれている。企業のギャラリーでありながら、本業とは必ずしも関わらないテーマで企画されているところもいい。さらに素晴らしいのは、小さなスペースにおける展示を補って余りある内容のブックレットの刊行だ。豊富な写真や資料、専門家が執筆した論文に加えてテーマに関連する人々に取材したインタビュー記事など硬軟取り混ぜたテキストもまた美術館・博物館の展覧会図録ではなかなか読むことができない内容で、毎回楽しみにしている。ブックレットの代々のアートディレクターには鈴木一誌、勝井三雄、祖父江慎らが名を連ねており、そのエディトリアル・デザインを眺めることも楽しみのひとつだ。旧・伊奈ギャラリーが開設された1981年はまだバブル経済の前、企業メセナブームよりはるか以前のことである。一時のブームや企業の業績に左右されず、これからも地道な文化活動が続いてくことを期待したい。[新川徳彦]

2016/11/10(木)(SYNK)

マリメッコ展

会期:2016/10/08~2016/11/27

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

いまや日本でもお馴染みの、フィンランドのデザインハウス、マリメッコの展覧会。会場は「Ⅰ.INTRODUCTION  はじめに─マリメッコとは?」「Ⅱ.TIMELINE marimekko 1951-2016 マリメッコの歩み」「Ⅲ.THE ART OF DESIGN デザインの芸術」の三部構成で、マリメッコ社の1951年の創業以来の歩みを振り返り数々のデザインを生み出したデザイナーたちの創作活動に触れることができる。マリメッコ社では石本藤雄、浦佐和子、大田舞、近藤正嗣、鈴木マサルら日本人デザイナーたちが活躍してきたが、その草分けは脇阪克二である。1968年からマリメッコ社に勤務した脇阪は、同社で採用されたはじめての外国人デザイナーだったという。近年は、手ぬぐいや地下足袋、和服などを製作する京都の和モダンブランド、SOU・SOUのテキスタイルデザイナーとして活躍している。脇阪のマリメッコ時代の代表作《ブーブー》は今ではクラシックコレクションのひとつとなっており、そのシンプルでカラフルな楽しいデザインはSOU・SOUのデザインにも通じるように思われる。フィンランドと日本は歴史も気候もずいぶん異なるが、マリメッコの伸びやかでカラフルなデザインのファブリックがこれほどまでにチャーミングで親しみやすく感じられるのは、感性にどこか共通点があるからかもしれない。今後、本展はBunkamuraザ・ミュージアムと新潟県立万代島美術館に巡回する予定である。[平光睦子]

2016/11/08(火)(SYNK)

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開館80周年記念展 壺中之展

会期:2016/11/08~2016/12/04

大阪市立美術館[大阪府]

大阪市立美術館の開館80周年を記念し、約8400件の館蔵品から名品約300件を選んで展示した。構成は、館の歴史を振り返る第1章、作品の形態を重視した鑑賞入門としての第2章から始まり、日本美術、中国美術、仏教美術、近代美術と続く。同館の主軸は日本・東洋美術であり、阿部コレクション、カザール・コレクション、住友コレクション、山口コレクション、田万コレクションなど、個人コレクターの寄贈や寺社の寄託が中心となっている点に特徴がある。それらの名品を約300点も一気に見るのは大変で、約半分を見終えた時点ですっかり疲れてしまった。しかし、日本の美術館でこれだけ充実した館蔵品展が行なわれる機会は滅多にない。この疲労感はむしろ心地良いものだと思い直して歩を進めた。欧米の美術館に比して日本の美術館は常設展示が貧弱だ。普段からこれぐらいのボリュームで館蔵品を見られれば良いのにと、心から思う。ちなみに本展の展覧会名は、中国の故事「壺中之天」によるもの。壺の中に素晴らしい別世界が広がっていたというお話で、壺を美術館に置き換えるとその意味がよく分かる。

2016/11/07(月)(小吹隆文)

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黄金町バザール2016 アジア的生活

会期:2016/10/01~2016/11/06

黄金町エリアマネジメントセンター[神奈川県]

毎年恒例のイベントとなり、アジアの作家が多く参加する平常運転の展示だった。個人的にはユ・ソンジュンや津川奈菜の絵が印象に残る。ハツネウィングでティエムラボやパーシモンヒルズアーキテクツがリノベーション的な空間デザインを行なう。横浜にぎわい座では、西倉潔、安田博道、敷浪一哉、青島琢治らの建築家が展示していた。ただし、模型はケース越しではなく、生で見たかった。

写真:左=上から、パーシモンヒルズアーキテクツ、ティエムラボ 右=上から、津川奈菜、西倉潔、ユ・ソンジュン

2016/11/05(土)(五十嵐太郎)

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GOOD DESIGN EXHIBITION 2016 そなえるデザインプロジェクト展

会期:2016/10/28~2016/11/03

渋谷ヒカリエ8/COURT・CUBE[東京都]

グッドデザイン賞特別企画の「そなえるデザイン」展。審査の傍ら、プロジェクト・メンバーとして関わった。グッドデザイン賞に選ばれたモノから、日常から災害時の各フェイズで活躍するデザインを紹介する企画。特にベスト100に選出された坂茂の紙管による間仕切りは、避難所を再現する大型のインスタレーションとして会場に出現していた。

写真:上=坂茂の紙管による間仕切り

2016/11/03(木)(五十嵐太郎)