artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

プレビュー:KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017

会期:2017/04/15~2017/05/14

京都市内16カ所[京都府]

京都の歴史遺産、寺社、町家、近代建築などを会場に行なわれるフォト・フェスティバル「KYOTOGRAPHIE」。過去4回の総入場者数は約25万人を数え、年々注目度が上がっている。優れた写真作品と国際観光都市・京都の魅力を同時に味わえるのだから、人気を博するのも道理だ。今年は16会場を舞台に国内外の写真家やコレクションを紹介する。なかでも、二条城二の丸御殿台所東南隅櫓の「アーノルド・ニューマン展」、誉田屋源兵衛 竹院の間の「ロバート・メイプルソープ展」、両足院(建仁寺内)の「荒木経惟展」は注目を集めるだろう。また、美術館「えき」KYOTOの「アニエスベー フォトコレクション」(会期はほかと異なる)も見応えがありそうだ。なお、同フェスティバルでは毎年テーマを設定しているが、今年のテーマは「LOVE」。恋愛や種の保存だけでなく、さまざまな文化的背景を持つ多種多様な愛の姿を提示するとのこと。昨今の国際的な世相に対するメッセージも兼ねているのだろうか。

2017/03/20(月)(小吹隆文)

神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2017 W.A.モーツァルト作曲 魔笛 全2幕

会期:2017/03/18~2017/03/19

神奈川県民ホール[神奈川県]

ともすれば、子どもだましで、コミカルな学芸会風の装置になりがちなこの演目に対し、闇と光、回転するリング群だけで構成された舞台美術は、驚くべきシンプルなものだが、佐東利恵子らのダンスとナレーションを増量している。おそらく正統なオペラファンには目障りかもしれないが、こうした実験がなければ、今回の演出にわざわざ勅使川原三郎を起用した意味がない。美しい舞台で、指揮や歌もよかった。

2017/03/19(日)(五十嵐太郎)

鶴岡市立加茂水族館

鶴岡市立加茂水族館[山形県]

鶴岡市内から車で20分ほどの海岸沿いにある、クラゲの展示で知られる水族館。前半はふつうの水族館と変わらないが、後半はクラゲだけ、というか、クラゲだらけ。なんでクラゲかというと、想像だけど、たぶん近海でクラゲが大発生して漁業に被害をもたらしたんで、この厄介者を逆に見世物にして街おこししちゃおうじゃないかと、だれかが発案したに違いない。クラゲはいくらでも獲れるし。この発想で「ゴキブリ昆虫館」とか「雑草植物園」とかつくったら、けっこう話題になると思う。人は入らないと思うけど。ちなみにここのレストランではクラゲを使った定食やアイスも出すそうだ。イルカのショーをやる水族館でイルカ料理を出したら大問題になるけど、クラゲなら許されるのは差別ではないか?

2017/03/19(日)(村田真)

日本・デンマーク外交関係樹立150周年記念 スケーエン:デンマークの芸術家村

会期:2017/02/10~2017/05/28

国立西洋美術館[東京都]

Skagenと書いて「スケーエン」と読むそうだ。デンマークの北部にある漁村で、ここに19世紀末から20世紀初頭にかけて画家や詩人、作曲家が集まり、国際的な芸術家村として知られたという。そのスケーエンに集った画家たちによる59点の作品が紹介されている。ま、はっきりいってド田舎だけに、農村リアリズムっていうんでしょうか、ジュール・ブルトンやバスティアン・ルパージュ風の写実的な風景画ばかり。しかも北方に位置するため光を渇望するせいか、白を多用するのが特徴だ。さわやかだけど、それだけ。だいたいヨーロッパもアメリカも日本も、時代を問わず、田舎に行くほどリアリズムが尊ばれるのはなぜだろう。なにか普遍的な法則があるのかもしれない。

2017/03/16(木)(村田真)

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VOCA展2017 現代美術の展望─新しい平面の作家たち

会期:2017/03/11~2017/03/30

上野の森美術館[東京都]

絵画中心の展覧会だが、今回は絵画からちょっと外れた作品に見るべきものが多かった。例えば益永梢子は、平坦に彩色したキャンバスを切り取って丸めて6個の透明のアクリルボックスに詰め込み、アクリルの表面にも彩色したりドローイングしたりしている。絵画の断片の集積であると同時に、それ自体が絵画としても成立している。東畠孝子は壁に木材を組んで棚をつくり、そこに本(古本、画集、アルバム、楽譜など)を並べ、観客が自由に手にとって読めるようにした。これも1冊1冊の本が平面の積み重ねであると同時に、本棚全体がひとつの絵画として見られるのだ。
写真を使った作品では、加納俊輔、Nerhol、村上華子の試みが、いずれも既知のシリーズではあるけれど斬新だ。特にNerholの作品は、連続撮影した200枚のポートレートを重ねてカッターで彫り込んだ6点セット。写されたモデルは同一人物なのに、それぞれ表情が異なって見えるだけでなく、そこには(撮影)時間の推移も刻まれている。また、これも平面の集積であると同時に、レリーフ作品としても捉えることができる。今回いちばん感心したのは、ごちゃごちゃした猥雑な都市風景を白黒で描き、一部分をくりぬいてそこからカラー映像を見せた照沼敦朗の作品だ。描写の密度といい、孤高の世界観といい、ずば抜けている。これに比べれば、VOCA賞の幸田千衣の「風景画」は薄い。どうしたんだろう。テーマ自体が絵具を塗る行為と共振しているように感じられた以前の「水浴図」と比べても、退行してないか。

2017/03/16(木)(村田真)

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