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artscapeレビュー

喜多村みか「meta」

2017年03月15日号

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会期:2017/01/19~2017/02/12

Alt_Medium[東京都]

喜多村みか(2006年にキヤノン写真新世紀優秀賞受賞)の新作は「ポートレート」だった。老若男女、多様な人物たちの姿が、画面のほぼ中央に据えられた横位置の写真が会場に淡々と並ぶ。それはたしかに「ポートレート」としかいいようのない作品なのだが、どこか居心地の悪さを感じる。ひとつは、被写体を同じ位置に、ほぼ無表情に直立させた構成に、作者の強い意思を感じないわけにはいかないからだ。もうひとつは、人物とその背景となる環境とのあいだに、かすかなズレがあるように見えるからである。人物だけが背景から切り抜かれ、コラージュされているように見えてしまう写真もある。
つまり、喜多村のこの試みは、一見さりげない「ポートレート」に見せて、タイトルが示すようにメタフィジカルな問いかけを含むものなのだろう。そのあたりについて、写真展にあわせて刊行された同名の写真集に寄せたテキストで、彼女はこんな風に書いている。
「つまりこれは、私やここに写っている人たちがこの世からいなくなったとき、誰かに見つめられ、そのとき何かを感じさせることが出来るかを問う、わたしの密かな実験でもある。」
たしかに、人物が写っている写真には、そんな問いかけを呼び起こす不思議な力が宿っている。喜多村が指摘するように、あと100年経てば、「私やここに写っている人たち」は一人残らずこの世を去ってしまうからだ。この試みはまだ始まったばかりということで、作品自体の数が少なく、展示のスタイルも定まっていないようだが、少し長く続けていくことで、「メタ・ポートレート」とでもいうべき方向に展開していく可能性があるのではないだろうか。誰をどう撮るのかという基準をよりクリアーにしつつ、作品の完成を目指していってほしい。

2017/02/09(木)(飯沢耕太郎)

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