artscapeレビュー

竹内公太 「写真は石碑を石にする、それでも人は」

2017年03月15日号

会期:2017/02/03~2017/03/04

SNOW Contemporary[東京都]

ギャラリー内の壁全面に2枚1組の画像が100組以上貼られている。画像は石碑を撮ったもので、1枚は1976年に出た斎藤伊知郎の『近代いわき経済史考』という本の図版からスキャンしたもの、もう1枚は、その石碑を実際に訪れた竹内が図版と同じ構図で撮影した写真(人が写ってる場合は竹内自身が同じポーズで写り込む)。彼にとっての関心事は記憶や記録にあるようで、石碑はたまたまいわき市の図書館で見つけたものだから、別に「いわき市の石碑」である必要はなかったのかもしれない。余談だが、石碑(モニュメント)も記憶(メモリー)も語源は記憶の女神ムネモシュネーに由来し、その娘たちがミュージアムの語源となるムーサイだから、全部つながっているのだ。ところで1976年というと、ぼくにとっては「わりと最近」だが、この図版を見るとぼくの記憶よりはるかに古く感じる。並んだ2枚を見比べても新旧は歴然としている。当時はデジカメもパソコンもなく、CGもスキャンもなく、もちろんインターネットやSNSなど考えられもせず、情報量はいまの数百分の1、いや数千分の1程度だったんじゃないか。そう考えるとたった40年前が石器時代にも思えてくる。変わらないのは石碑だけだから「石碑時代」というべきか。

2017/02/17(金)(村田真)

2017年03月15日号の
artscapeレビュー