2017年09月15日号
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artscapeレビュー

第14回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展 佐藤麻優子展 ようかいよくまみれ

2017年03月15日号

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会期:2017/01/31~2017/02/17

ガーディアン・ガーデン[東京都]

2016年の第14回写真「1_WALL」展でグランプリを受賞した佐藤麻優子の受賞者個展である。受賞のときから、その一見ノンシャランな作品のあり方には賛否両論があり、個展としてきちんと成立するかどうかという危惧もあったのだが、結果的にはとても面白い展示になった。彼女の本領発揮というべきだろうか。のびやかな構想力と脱力感が共存するとともに、被写体となる人たちとの絶妙な距離の取り方が魅力的だ。
展示の全体は、「ただただ」、「まだ若い身体です」、「もうない」、「夜用」、「その他」の5つのパートに分けられている。ただ、それぞれのパートの作品に、それほど大きな違いがあるわけではない。彼女と同世代の女性の友人たちが、ゆるゆると、思いつきとしか見えないパフォーマンスを繰り広げている場面をフィルムカメラで撮影した写真が、淡々と並んでいる。基調となっているのは、「焦り、不安、無気力感」(「ただただ」)、「満たされなさ、悲しさ、寂しさ」(「まだ若い身体です」)といった、どちらかといえばネガティブな感情なのだが、それもそれほどシビアな切実感を伴うものではない。それでも全体を通してみると、2017年現在の東京の、どこか足元から崩れてしまいそうな予感を秘めた閉塞感、不安定感が、きちんと(むしろ批評的な視点で)写り込んでいる。23歳の「若い身体」をアンテナにして、全方位で末期資本主義の「よくまみれ」の世界のあり方を写真に取り込もうとする意欲が伝わる気持のいい展示だった。意外とこのあたりに、次世代の写真表現の芽生えがあるのかもしれない。

2017/02/02(木)(飯沢耕太郎)

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