artscapeレビュー

進藤環「仙人のいる島」

2017年10月15日号

会期:2017/09/16~2017/10/14

ギャラリー・アートアンリミテッド[東京都]

進藤環はこれまで自作の写真を切り貼りしてコラージュし、架空の風景を組み上げていく作品を発表してきた。ところが、今回東京・六本木のギャラリー・アートアンリミテッドで開催された新作展では、展示されたほとんどの作品が「ストレート写真」だった。コラージュの手法を用いた2点も、ほとんど操作の跡は見えない。
作品のスタイルが変わったのは、おそらく今回のテーマ設定によるところが大きいのではないだろうか。進藤は3年ほど前に岡山県笠岡市の北木島を訪れ、周囲から「仙人」と呼ばれる不思議な老人に出会う。そのたたずまいに惹かれて、島を再訪して彼のポートレートだけでなく、住居や周囲の風景を撮影した。主題となる被写体が限定的である場合、コラージュによって再構築する必然性はなくなる。実際、今回のシリーズでは、「ストレート写真」が違和感なく目に飛び込んできた。モノクローム中心の緻密な画面構成、丁寧なプリントも、テーマにふさわしいものになっていた。3年前に、九州産業大学芸術学部写真、映像メディア学科の講師として福岡に移り住み、制作の環境が大きく変わったことも、作風の変化に影響しているのではないかと思う。
ただ、このまま全面的に「ストレート写真」に移行する必要もないだろう。次に何を撮影するかで、コラージュの手法が再び復活することがあるかもしれない。よりフレキシブルに、新たな領域にチャレンジしていってほしいものだ。

2017/09/21(木)(飯沢耕太郎)

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