2018年09月15日号
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artscapeレビュー

1937──モダニズムの分岐点

2017年10月15日号

会期:2017/09/16~2017/11/05

神奈川県立近代美術館 葉山[神奈川県]

例えば「1920年代展」のようにディケードで区切って見せる展覧会はよくあるが、同展のように特定の年に絞った展覧会はあまり例がないのではないかと思ったら、東京都現代美術館の「日本の美術──よみがえる1964年」とか、目黒区美術館の「1953年ライトアップ」とか、意外とあった。1937年といえば盧溝橋事件を発端に日中戦争が始まった年。海外ではスペイン内戦が勃発し、ナチスがゲルニカを空襲、パリ万博でピカソが《ゲルニカ》を発表。朝井閑右衛門が最初の戦争画とされる《通州の救援》を描き、ナチスが「頽廃芸術展」を開催したのもこの年だ。軍靴の音が刻々と近づき、第2次大戦へとなだれ込む直前だが、一方でモダンな都市文化が花開き、シュルレアリスムや抽象といったモダンアートの全盛期でもあった。タイトルどおり、まさに「モダニズムの分岐点」となる年に焦点を当てた展覧会だから、おもしろくないわけがない。
と単純に考えたのだが、しかし同展は企画展ではなく、「マックス・クリンガー版画展」と同時開催のコレクション展なので、じつはあまり期待してなかった。結果的に、まあ期待しないで正解だった。というのも、計40点ほどの自前のコレクションでは、モダニズムの装いの下に響く戦争の足音など聞き取りようがないからだ。少なくとも戦争を予感させる作品は皆無といっていい。前述の朝井閑右衛門の大作《丘の上》と《ロリルの踊り》は出ているが、肝腎の《通州の救援》はそもそも現存せず。また内田巌の《港》にはどことなく不穏な空気を感じるが、それはその後の苦難の時代を知ってるからそう感じるのであって、知らなければただの寂しい絵にすぎない。ほかに、村井正誠《ウルバン》、阿部合成《鱈をかつぐ人》、松本竣介《建物》など、1937年前後の作品を引っぱり出しているが、全体からなにかひとつの方向性が見えてくるわけではない。むしろそれが1937年という時代の特性かもしれないし、逆にひとつの方向性しか見えてこなかったら展覧会としてウソっぽいということだ。

2017/09/29(金)(村田真)

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