2018年04月15日号
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artscapeレビュー

運慶

2017年10月15日号

会期:2017/09/26~2017/11/26

東京国立博物館[東京都]

日本の古美術にはあまり関心がないし、彫刻のことも詳しくないけれど、いちおう話題の展覧会なので見に行く。運慶の真作は諸説あるらしいが、一般に30点前後といわれている。だいたいフェルメールと似たようなもんだ。うち22点が出品されるというからジャーナリズム的には「事件」といえるかもしれない。ほかに康慶、湛慶ら父と子の作品も出ていて、キャッチーにいえば「望みうる最高の運慶展」といっていいかも。
彫刻ましてや仏像の見方なんか知らないけれど、でも見ればなんとなく運慶は違うということはわかる。おそらく康慶や湛慶も凡百の仏師に比べれば遥かに優れているのだろうけど、それでもなお運慶のほうが「うまい」と思う。この「うまい」と思う価値判断は、カタログのなかで同館の浅見龍介氏も述べているように、近代的な彫刻家として見たらということであって、けっして仏師としての価値基準ではない。一言でいえば「リアル」ということだ。ポーズといい表情といい衣紋といい、ほかの仏像には見られない個性が感じられ(もちろん作者のではなくモデルの個性)。匿名の人物像ではなく、特定の個人を描いた肖像になっているのだ。さらに玉眼を入れることで反則的にリアリティを増している。《無著菩薩立像》などはミケランジェロよりも近代的だ。
気になるのは色彩の剥落や変色、ひびなどのヨゴレ。《無著菩薩立像》と対の《世親菩薩立像》の顔など色がはがれて黒ずみひび割れ、まるで無惨な焼死体のようだ。まあ仏像の世界ではそんなヨゴレなど本質とは関係のない表面上の現象にすぎない、と思われてるのかもしれない。特に古美術の世界ではこうしたヨゴレはむしろ付加価値として尊ばれることもあるようで、興福寺の《四天王立像》など極端なヨゴレゆえにスゴミが何倍にも増幅されている。逆に《聖観音菩薩立像》みたいにハデな色彩(後補)のほうが安っぽく見られてしまいかねない。不思議なもんだ。
さて、運慶の彫刻で近年ジャーナリズムを騒がせたものに、真如苑の《大日如来像》がある(同展ではまだ運慶作と認められていないが)。この作品は2008年にニューヨークでオークションにかけられ、真如苑が日本美術品の最高値を更新する1400万ドル以上(約14億円)の値で落札し、懸念された海外流出を免れたと話題になったものだ。ところがその直後、村上隆の巨大フィギュア《マイ・ロンサム・カウボーイ》が、やはりニューヨークのオークションで1500万ドル(約16億円)を超す値をつけ、あっさり記録を更新。運慶がフィギュアに負けてしまったのだ。ともあれ、その《大日如来像》、像高60センチ余りと思ったより小さかった。

2017/09/25(月)(村田真)

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