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写真 |
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土屋誠一/つちやせいいち・美術批評 |
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北島敬三『PORTRAITS+PLACES』 |
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2008年に注目する写真家とその理由 |
2008年のみに限るわけではないが、
──北島敬三
とりわけ、長期にわたり継続されている〈Portraits〉シリーズにおいて、写真というメディアの批評性と衝迫力を観る度に感じさせる写真家は稀有である。 |
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2008年に期待する展覧会・ムーヴメントとその理由 |
与えられたテーマの「写真」とは直接関係ないが、展覧会一般と解して挙げておく。
──「没後50年 横山大観――新たなる伝説へ」(国立新美術館)
2008年開催の展覧会をすべて把握しているわけではないので、近日開催のものから。ここ数年来「日本画」についての議論は継続してなされているが、良くも悪くも「国民的」な「巨匠」である大観について、まともな研究書一冊もないのは、どうしたわけであろうか。この展覧会に大観理解の新しいパースペクティヴを期待するわけではないが、少なくともこの大回顧展を観ることで、大観の、あるいは日本画のナショナリズムについて考えるきっかけにはなるだろう。 |
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2007年に記憶に残った書物、論文、発言など |
──中平卓馬『見続ける涯に火が…──批評集成1965-1977』(八角聡仁・石塚雅人編、オシリス、2007)
見ることと思考すること、そしてその両者の切断面を露わにするテクスト群。30年以上前に書かれたテクストの集成を、2007年のベストとして取り上げなければならないのは、何とも皮肉である。けれども、昨年読んだ写真や美術についてのもののなかで、中平が当時記したこれらのテクスト群に比肩するだけの強度と緊張感を持った批評を、私はほかに知らない。これを、1970年前後という時代精神が為せる業と理解して、単に歴史研究のための資料として貶める愚は避けねばならないだろう。なぜなら(自戒も込めて言えば)、切迫した焦燥と緊張によってテクストを紡ぐことこそが、批評が為すべき行為であろうからだ。 |
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