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写真 |
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深川雅文/ふかがわまさふみ・川崎市市民ミュージアム学芸員 |
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折元立身『ORIMOTO TATSUMI Perofrmance Raisonne』 |
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2008年に注目するアーティストとその理由 |
折元立身に注目したい。折元は、2006年に自身の仕事を集成した『ORIMOTO TATSUMI Perofrmance Raisonne』(ギャラリー21+葉、2006)を出版した。70年代初頭から今日までの仕事を写真を中心にまとめたこの本の出版は、わが国ではほとんど顧みられないにもかかわらず、海外で反響を呼び、あらためて評価が高まっているからである。その皮切りが、1月のサンパウロビエンナーレでの大展覧会である。1,231点の写真による展覧会は、写真メディアとアートの関係という点でも注目すべき仕事である。今年はすでに海外でのいくつかの展覧会が決っており新たな展開が期待される。 |
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2008年に期待する展覧会・ムーヴメントとその理由 |
やはり、横浜トリエンナーレ2008を挙げなければならないだろう。過去二回が祝祭的な側面がどうしても強かったのに比べ、今回のトリエンナーレのキュレーター・スタッフは、派手さはないかもしれないが、地に足がついた目利きのキュレーションが期待できる陣容であると思われるからである。祝祭はもういいのではないか。アートの現場と土壌を見せてくれ。まさにテーマにある「裂け目」を見せてくれ。それはアートの使命でもあるのだから。セレクトされる写真作家の仕事から、現代における写真の可能性も見えてくるはず。 |
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2007年に記憶に残った書物、論文、発言など |
──大山顕+石井哲『工場萌え』(東京書籍、2007)
「萌え」が「工場」という公の建築物にまで広がりを見せ、写真というかたちでウェブでリンクを重ねた末に生まれた写真集。しかも、掲載されているイメージは80年代のニュートポグラフィックス風そのもの。そのルーツのひとつであるベルント・ベッヒャーが2007年に逝去した。しかし、翻ってみるとベッヒャーも「工場」を愛していたことはたしかである。「萌え」とは別の仕方で。 |
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