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映画 |
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北小路隆志/きたこうじたかし・映画批評
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生誕百年・映画監督マキノ雅弘 |
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2008年に注目する作家とその理由 |
──松江哲明
かねてから期待を寄せる若手ドキュメンタリー映画作家(?)の一人である松江だが、昨年劇場公開もされた「童貞。をプロデュース」に心から衝撃と感動を覚えた僕とすれば、その続編ともいうべき作品の製作が予告されている以上、どうしたって彼を「2008年に注目する映像作家」の筆頭に挙げないわけにいかなくなる。『童貞。をプロデュース』で達成された瞠目すべき地平とは何か? それは新たなる民族誌映画とも言うべきジャンルの出現である。人類学及びドキュメンタリー映画が諸々の厳しい批判的作業を経て現在に至っていることは周知の事実だが、おそらくそうした経緯にほとんど配慮することなく松江は、ぬけぬけと童貞を現代日本における「内なる植民地」や「未開人」(!)として規定する。その鮮やかな実践の行方にぜひ注目されたい。 |
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2008年に期待する展覧会・ムーヴメントとその理由 |
──「生誕百年・映画監督マキノ雅弘」(2008年1月5日〜2月17日、東京国立近代美術館フィルムセンター) なにはともあれ年明けと共にすでに開催が始まっているマキノ特集を絶対に見逃すべきでなく、何カ月か先のことを悠長に展望する余裕など僕らに許されていない。手持ちの仕事を放棄してでも明日から東京・京橋のフィルムセンターに日参すべきだろう。この素晴らしい企画を過去の映画を懐かしむ退行的態度から遠ざけ未来への糧と転じることこそ、2008年の年頭に僕らが直面する最大の課題なのだ。 |
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2007年に記憶に残った書物、論文、発言など |
──『現代思想 総特集=ドキュメンタリー』(青土社、2007)
僕自身も参加した企画なので逡巡も覚えるが、なによりも昨年夏に急逝されたドキュメンタリー映画作家佐藤真の遺稿となった論考が収録されており、昨年僕らを直撃した最大の損失である佐藤氏の死を改めて記憶に刻むべくこの雑誌特集を挙げることにする。ドキュメンタリーもまた映画である……。この当然といえば当然の認識へと佐藤氏は最終的に立ち戻っており、彼の遺志を継承して僕らは、ドキュメンタリー=映画を巡る思考及び実践の戦場へとひたむきな参戦を果たさなければならない。 |
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