artscapeレビュー
藝術学関連学会連合 第8回公開シンポジウム「芸術と記憶」
2013年07月01日号
会期:2013/06/08
国立国際美術館[大阪府]
藝術学関連学会連合第8回公開シンポジウム「芸術と記憶」が国立国際美術館で開催された。「記憶」は諸芸術といかなる関係を結んでいるのかについて、研究者による発表と活発な議論が交わされた。発表の詳細は以下のとおり。香川檀氏は「漂流の前と後──不在者の縁(よすが)としての写真とモノ」、関村誠氏は「ヒロシマの〈顔〉と記憶」、平芳幸浩氏は「現代芸術におけるデジャヴュとジャメヴュ」(*筆者注:「デジャヴュ」=既視感、「ジャメヴュ」=未視感)、村上タカシ氏は「3.11メモリアルプロジェクト(のこすプロジェクト)」、大森正夫氏は「作法としての空間意匠──月待ちの日本美」、桑木野幸司氏は「初期近代西欧の芸術文化における創造的記憶」、沼野雄司氏は「前衛音楽における形式と記憶」、山崎稔惠氏は「服飾における触覚の記憶──『ユルスナールの靴』をめぐって」。いずれも、現代アート(イメージ)と建築デザイン・音楽・服飾など、取り上げられる対象/場と「記憶」のありよう(個人的/集団的/社会的)はさまざまであったが、一般に私たちが想起することの少ない不可視の「記憶」が芸術のなかではたす役割や記憶にかかわる営為について考える貴重な機会であった。そこでは、諸芸術間の相違というよりも、記憶という手がかりを通じて、むしろ統合性を感じられたのが新鮮であった。主催者の「記憶は、過去や回想といった言葉と連想されがちだが、個人や社会に直接取り込まれ、媒体なしに瞬時によみがえる記憶こそが、じつは、現在や未来と、そして芸術の創造と密接につながっている」という言葉は今日にあって示唆的だ。[竹内有子]
2013/06/08(土)(SYNK)