artscapeレビュー
ムサビのデザインIII デザインが語る企業理念:オリベッティとブラウン
2013年07月01日号
会期:2013/06/03~2013/08/18
武蔵野美術大学 美術館[東京都]
オリベッティ社とブラウン社は、ともに20世紀の多くのデザイナーに影響を与えた存在であるが、その製品分野や、デザインの用いられかたには違いがある。1908年にイタリアのイブレアに設立されたオリベッティ社は、タイプライター製造を出発点として計算機やオフィス家具などの事務機器の分野で事業を拡大した。1921年にドイツのフランクフルトに設立されたブラウン社は、音響機器、シェーバー、家電製品など、生活に身近な分野に優れたデザインの製品を提供してきた。オリベッティ社はさまざまなクリエーターたちと仕事をし、そのカラフルで印象的なプロダクト・デザインばかりではなく、広告においても製品がつねに先端にあることを印象づけてきた。また、工場やオフィスの建築にも特徴があり、芸術の支援にも力を注ぎ、企業のブランドイメージを形成してきた。他方で、ブラウン社はデザイナーであるディーター・ラムスのもとで統一された色彩とデザイン言語を用い、機能的な製品とのイメージをつくりあげていった。
「ムサビのデザイン」第3弾は、デザインによってブランドイメージを形成したオリベッティとブラウンという二つの企業に焦点を当て、武蔵野美術大学美術館が所蔵するプロダクト、ポスター、製品カタログや、ノベルティなどを約200点が出品されている。展示品に触れることはできないが、ガラスケースに入れられているのではなく、至近距離から製品の素材や質感、構造を観察することができる。写真撮影も可能である。展覧会図録(このブックデザインは一見に値する)には、2009年にサントリーミュージアム天保山と府中市美術館で開催された「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代──機能主義デザイン再考」展シンポジウムのテキストが収録されており、資料としての価値も高い。ただ展覧会の構成としては、両社のデザインを取りまいていた社会的背景について歴史年表を提示するに留まっており、「企業の理念」の形成についてはもう少し解説が欲しい。[新川徳彦]
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2013/06/17(月)(SYNK)