artscapeレビュー
無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol. 14
2018年02月01日号
会期:2017/12/02~2018/01/28
東京都写真美術館[東京都]
吉野英理香、金山貴宏、片山真理、鈴木のぞみ、武田慎平の5人展。この順に作品が展示されているが、見ていくうちに写真展から、写真も素材に採り入れた現代美術展へと趣を変えていく。そういえばタイトルも「日本の新進作家」であり、写真家に限定していない。金山は似たようなおばあさんばかり撮った見た目ふつうの写真だが、彼女らは統合失調症の母とその姉妹(作者からすれば叔母たち)。こういうきわめて私的な動機で撮った私的な写真を公表することには違和感を感じるが、その違和感がこの作品をふつうの写真から遠ざけている。片山はセルフポートレート写真を中心に、手づくりのオブジェやコラージュで構成したインスタレーションで、5人のなかでいちばん目立っている(浮いているというべきか)。本人はセルフポートレートを撮ってる自覚も、写真作品を制作しているつもりもないそうだ。窓や鏡にピンホールカメラの手法で外の風景を焼きつけた鈴木は、写真の原理を問い直そうとしているように見えるが、むしろ絵画の延長と捉えたほうがわかりやすい。窓も鏡も写真のメタファーである以前に絵画のメタファーだった。武田も印画紙に放射性物質を含む土を被せて感光させる点で、写真の原理に遡ろうとしているようだが、そのイメージはもっとも写真から遠く、科学的な実験データでも見せられているようなおもしろさがある。
2018/01/12(金)(村田真)