artscapeレビュー
毛利悠子 グレイ スカイズ
2018年02月01日号
会期:2017/12/02~2018/01/28
藤沢市アートスペース[神奈川県]
初めて訪れるアートスペース。藤沢市が美術館を持たず「アートスペース」にしたのは、建物やらコレクションやら面倒なものを背負わず身軽でいられるという道を選択したからかもしれないが、近隣に神奈川県立近代美術館や茅ヶ崎市美術館、平塚市美術館があるのでこれ以上必要ないと考えたのかもしれない。近隣に美術館が林立すると相乗効果も期待できるが、逆に共倒れしかねないからだ。まそんなことはどうでもいい。最寄り駅は藤沢ではなく隣の辻堂で、北口の巨大なショッピングモールをすぎたあたりの新しいビル内にアートスペースはある。上の階には市立の藤澤浮世絵館も入っている。
そんな場所でなぜ毛利悠子展が開かれるのかというと、彼女が藤沢市出身だからというわかりやすい理由だ。最初の部屋では、自動的に杯が傾く半透明のジョッキの脇腹に波打つ浜辺の映像を映し出している。それがちょうど泡立つビールを飲み干しているように見えるのだ。奥の大きな部屋はカーテンで弧を描くように仕切られ、エリック・サティの「家具の音楽」に触発されたインスタレーション《パレード》を公開。まず花柄の壁紙をコンピュータで読み取り、絵柄の濃淡に反応してスイッチオン。ドラムを叩いたりアコーディオンを鳴らしたり明かりを灯したり、動き始める仕掛けだ。楽器などは学校の廃物らしい。別の部屋では、駅構内の水漏れの応急処置にインスピレーションを受けた《モレモレ:ヴァリエーションズ》を展示。ブリキのバケツやタライ、ペットボトル、波形のプラスチックボードなどを、水の循環するビニールチューブがつないでいる。すべてがチープな素材で、つなぎもガムテープで止めるなどいい味出している。
2017/12/24(日)(村田真)