2019年09月01日号
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artscapeレビュー

原爆をめぐる表象──「丸木位里・俊 —《原爆の図》をよむ」/ジョプノ・ドル『30世紀』/「アール・ブリュット ジャポネⅡ」

2018年12月15日号

「丸木位里・俊 —《原爆の図》をよむ」
会期:2018/09/08〜2018/11/25
広島市現代美術館[広島県]

フェスティバル/トーキョー18 ジョプノ・ドル『30世紀』
会期:2018/11/03〜2018/11/04
東京芸術劇場[東京都]

「アール・ブリュット ジャポネⅡ」
会期:2018/09/08〜2019/03/10
アル・サン・ピエール美術館[パリ]

異なるジャンル、異なる場所において、原爆をめぐる表象に出会う機会が続いた。ひとつは11月25日に訪れた「丸木位里・俊ー《原爆の図》をよむ」展(広島市現代美術館)である。丸木夫妻による有名な「原爆の図」の5部作とその再制作版を横に並べながら、湾曲したカーブのある地下の大空間を使い切る迫力の展示だった。両者を比較すると、構成は同じだが、オリジナルに対し、ドラマティックな効果を加えたことがよくわかる。もちろん、「原爆の図」の展示がハイライトなのだが、この作品が生まれるまでの経緯と各地を巡回したその後の展開を紹介していたのも興味深い。すなわち、洋画家の俊と日本画家の位里が出会い、原爆という世界史的な惨事を作品化したという背景である。とくに俊が単身でロシアや南洋に渡ったアクティブな女性だったことに驚かされた。また二人が協同した作品において、彼女がはたした役割がかなり大きいように思われた。

11月4日に観劇したジョプノ・ドル「30世紀」(東京芸術劇場)は、すでに100回以上演じられているヒロシマ、ナガサキ、第五福竜丸の物語であり、同時に危険な世界とアジアの情勢を告発するものだった。近年のフェスティバル/トーキョーはアジアの作品を積極的に紹介しているが、シニカルな「リアリズム」によって、いまや日本でさえ風化している悲劇をバングラデシュの劇団が突きつける。とくに第五福竜丸の事件までとりあげているのはめずらしいだろう。また新聞紙とストールを床に敷いただけのシンプルな舞台も印象的だった。今回が日本での初演らしいが、いつか広島や長崎でも行なわれるかもしれない。そして12月2日、パリのサクレ・クール寺院の足元にあるアル・サン・ピエール美術館の「アール・ブリュット ジャポネⅡ」でも思いがけない遭遇があった。アール・ブリュットは確かにインパクトをもつが、内面の探求が強く、社会や政治との関係が稀薄なのが以前から気になっていた。しかし、本展では、広島の被爆体験をした二人(廣中正樹と辛木行夫)が、高齢になってから記憶をもとに描いた作品があり、虚をつかれた。

アル・サン・ピエール美術館、外観


アル・サン・ピエール美術館、内観


「アール・ブリュット ジャポネⅡ」展、壁全体に展開する巨大な地図のような作品


「アール・ブリュット ジャポネⅡ」展、廣中正樹の作品


「アール・ブリュット ジャポネⅡ」展、辛木行夫の作品

2018/12/02(日)(五十嵐太郎)

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