artscapeレビュー

ジャポニスム2018 「安藤忠雄 挑戦」

2018年12月15日号

会期:2018/10/10~2018/12/31

ポンピドゥー・センター[パリ]

パリで開催されている安藤忠雄展は、入場制限がかかるほどの盛況ぶりで、室内の行列でしばらく待ってからようやく展示を見ることができた。会場のポンピドゥー・センターに近い、パリの中心部にもうすぐ彼の新作となる美術館《ブルス・ド・コメルス》が登場するためだろうか。日本だけではなく、海外における安藤人気の凄さを思い知る。本展は話題になった2017年の新国立美術館の個展を巡回したものである。ゆえに、その内容をおおむね踏襲し、原型/都市/風景/歴史といった構成になっているが、六本木と比べて、会場の面積が少し小さい分、濃密に作品と向きあう(なお、パリでは写真撮影がOK)。またキュレーションを担当したフレデリック・ミゲルーによる安藤へのインタビューの映像が追加されていた。なお、原寸で再現された《光の教会》は、さすがにそのままもっていくことができず、ポンピドゥー・センターでは十字の壁だけが屋外に設置された。全体を再現することができなかったのは、床の荷重制限もあったらしい。

室内の展示はオーソドックスである。最初のセクションは、若き日の安藤の旅、彼が描いたスケッチや撮影した写真、都市ゲリラ住居のプロジェクト、そして事務所や住宅を紹介している。個別の作品に対する説明はあまりなく、むしろモダニズムを基盤とするコンクリートの幾何学によって、言葉がなくとも建築の魅力を伝えていた。すなわち、かたちそのものであり、周辺環境の細かい解読や近隣のコミュニティがどうだ、といったデザインとは違う。もっとも、最後のセクションでは、歴史との対話を重視し、ヨーロッパにおけるリノベーションのプロジェクトがメインとなる。ヴェネツィアの《プンタ・デラ・ドガーナ》やロンドンの《テートモダン》のコンペ案などだ。そしてラストは、やはり《ブルス・ド・コメルス》の大きな模型を置き、パリの未来像に期待を抱かせる。

安藤が撮影した写真と住宅模型(左)、旅のスケッチ(右)


直島の模型


《テートモダン》のコンペ案(左)、《光の教会》模型(右)


《ブルス・ド・コメルス》模型


2018/12/01(土)(五十嵐太郎)

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