artscapeレビュー

石田真澄「evening shower」

2019年02月15日号

会期:2019/02/02~2019/02/24

QUIET NOISE arts and break[東京都]

石田真澄は、1998年生まれという最も若い世代の写真家。高校時代から注目され、2018年にデビュー写真集『light years-光年-』(TISSUE PAPERS)を刊行した。今回展示されたのは、彼女が19歳から20歳にかけて撮影した写真である。

奥山由之や草野庸子など、若い世代の写真家たちのなかにフィルムカメラを使用して撮影・発表する者が目立つが、石田もそのひとりである。われわれにとっては、ややノスタルジックな思いにとらわれてしまうのだが、彼女たちにはフィルムや銀塩プリントの淡く、ややざらついた質感がとても新鮮に思えるのだろう。そのあたりのギャップを頭に入れたとしても、彼女が見せてくれる世界のあり方そのものが、あまりにも後ろ向きに思えてならない。色や形や光に対する鋭敏な感受性、被写体の動きをあらかじめ予測してシャッターを切っていく能力の高さ、画面構成の巧みさなど、写真家としての美質は充分過ぎるほど持っているのだが、この場所に自足してしまいそうな妙な安定感が気になってしまう。

写真展に寄せた文章に、「もうくせだと思うけれど/いつもいつも目先の不安ばかり気にしてしまい/今ここにあるものを大切にできない時がある/写真を撮ると少しだけ不安が消える気がしている」と書いているのだが、「今ここにあるものを大切」にする必要などないのではないか。むしろ「不安」を大事に育て上げ、それを梃子にして写真を撮り続けなければ、次のステップに進めないのではないだろうか。まばゆいほどの才能の輝きが色褪せないうちに、心揺さぶる不確実な世界に目と体を向けていってほしい。

2019/02/19(火)(飯沢耕太郎)

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