artscapeレビュー

新山清「VINTAGE」

2019年02月15日号

会期:2019/02/13~2019/04/27

gallery bauhaus[東京都]

新山清(1911~69)は愛媛県生まれ。東京電気専門学校卒業後、1935年から理化学研究所に勤め、戦後の1958年に旭光学に移った。そのあいだ、アマチュア写真家としてコンスタントに活動を続け、各写真雑誌に多数の作品を発表したほか、ドイツのオットー・シュタイネルトに呼応して、「国際主観主義写真展」(1956)、「サブジェクティブ・フォトグラフィ3」展(1958)にも参加している。今回の展覧会には、1969年に58歳で不慮の死を遂げた彼が生前に残した1940~60年代のヴィンテージ・プリント(写真家が撮影してすぐに制作したプリント)、49点が出品されていた。

本展もそうだが、このところ新山に限らず、迫幸一、大藤薫、後藤敬一郎など、「主観主義写真」の時代の写真家たちの仕事に注目が集まってきている。彼らの写真が、戦前のアマチュア写真家たちが切り拓いてきた「新興写真」、「前衛写真」の伝統を受け継ぐとともに、独特の切り口で戦後社会を切り取ったものであることがようやく見えてきたからだ。今回展示された作品を見ると、花、静物、風景、スナップなど、新山のアプローチの幅はかなり広い。ヌード写真や女性モデルを撮影したファッション写真風の作品まである。そこには、好奇心の赴くままに、さまざまな被写体に向き合っていく、アマチュア写真ののびやかさがよくあらわれている。また、35ミリ判と6×6判のカメラを自在に使いこなして、的確なフレーミングで画面に収めていく技術力の高さを窺える作品が多かった。

アマチュア写真家たちの創造性は、1970年代以降に急速に枯渇していくので、新山の仕事はその最後の輝きを示すものといえる。戦前の仕事も含めて、彼の作品を集大成した写真展や写真集をぜひ見てみたい。

2019/02/13(水)(飯沢耕太郎)

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