2019年07月01日号
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artscapeレビュー

所蔵作品展 デザインの(居)場所

2019年07月01日号

会期:2019/05/21~2019/06/30

東京国立近代美術館工芸館[東京都]

デザインという概念の誕生には、18世紀後半から19世紀前半にかけてイギリスで起こった産業革命が大きく影響している。ウィリアム・モリスは職人の手仕事が失われていく状況を嘆き、大量生産に異を唱えた人物として知られるが、一方、同国で活躍したクリストファー・ドレッサーは大量生産を受け入れ、機械生産のための専門知識を学んだ最初のインダストリアルデザイナーだった。さらに19世紀末から20世紀初めにかけてフランスから世界に広がり流行したアール・ヌーヴォーアール・デコといった装飾美術、20世紀前半にドイツで開校したバウハウスが推し進めた合理主義に基づく製品の規格化など、世界のデザイン史を大きく振り返るところから本展は始まる。そのなかでデザインがどう関わり、デザイナーがどのような理念を掲げたのかを紹介していく。

展示風景 東京国立近代美術館工芸館[写真:サイキ]

例えば合板を曲げる技術を利用して椅子を設計したチャールズ&レイ・イームズ。日本の素材と伝統技術を生かした家具を生み出し、ジャパニーズモダンを提唱した剣持勇。彫刻を通じて、芸術と人々と社会との間の橋渡しをしようとしたイサム・ノグチ。グラフィックデザインを学んだ後、新しい友禅のあり方を探求した森口邦彦。家具、日用品、ポスター、テキスタイル、陶磁器、ジュエリーなどさまざまな分野を横断して、その時代に活躍したデザイナーの象徴的な作品を取り上げる。

結局、いつの時代もデザイナーは挑戦してきた。本展のメッセージはそういうことではないか。そもそも産業革命が起こる以前、工芸しかなかった時代にはデザインという概念が希薄で、工業化が進んだことでインダストリアルデザイナーの存在が明確となり必要となった。しかしデザインという概念がいったん確立されると、工芸にも工業にも、デザインの力は多かれ少なかれ必要であることがわかってくる。いまの日本のものづくりを見ても然り。工芸事業者とデザイナーが組み、モダンクラフトやプロダクトを生み出す例は枚挙にいとまがない。本展は工芸館ゆえに主に工芸にスポットを当てた内容だったが、極論を言えば、日常生活のありとあらゆるものにデザインが介在する。「デザインの(居)場所はどこ?」という命題に対し、「すべて!」と答えられる人は果たしてどのくらいいるだろうか。

展示風景 東京国立近代美術館工芸館[写真:サイキ]

展示風景 東京国立近代美術館工芸館[写真:サイキ]


公式サイト:https://www.momat.go.jp/cg/exhibition/wheredesign2019/

2019/06/08(杉江あこ)

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