artscapeレビュー
小野山琴実「叫ぶように、祈るような」
2019年07月01日号
会期:2019/06/15~2019/06/22
VACUUM GALLERY[大阪府]
小野山琴実は1993年、滋賀県生まれ。2015年にビジュアルアーツ専門学校大阪の写真学科を卒業し、同校の助手を務めていたが、今年からフリーの写真家として活動し始めた。『Better Half』(2016)、『光彩を放つ黒』(同年)、『光の痕』(2018)と、ZINE(小冊子の写真集)を3冊ほど出したことはあるが、本格的な個展としては、今回のVACUUM GALLERYでの展示が初めてになる。
壁に撒き散らすように直貼りされた、大小65点の写真群の中心となっているのは、同年代の女性たちのヌードである。単純な構成の写真はほとんどなく、体にペインティングしたり、画像を投影したり、さまざまな色味の光を当てたりして、彼女たちに内在するエロス(生命力)を引き出そうとしている。それらが日常の光景や、ヌード以外の演劇的なシチュエーションの場面と混じり合い、絡み合って、何とも混沌とした眺めを出現させる。写真の相互の組み合わせが、必ずしもうまくいっているとは思えないし、作者の意図も明確には伝わってこない。にもかかわらず、そこにはまさに「叫ぶように、祈るような」思いで撮影しているという、切実な感情があふれ出ている。若い世代の、どちらかといえば小綺麗にまとまった写真を見慣れた目には、それがとても新鮮に映った。
とはいえ、このまま続けていっても、混沌とした状態を保ったまま、テンションが下がっていくだけだろう。次に必要なのは、もう少し冷静に、自分にとって何が最も大切なテーマなのかを見極めていくことではないだろうか。小野山の写真の中には、バタイユの『眼球譚』を思わせる「眼」のイメージがよく出てくる。そのあたりを、キー・イメージとして育て上げていってもいいかもしれない。
2019/06/19(水)(飯沢耕太郎)